研究課題/領域番号 |
20K00708
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
舘岡 洋子 早稲田大学, 国際学術院(日本語教育研究科), 教授 (10338759)
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研究分担者 |
金 孝卿 麗澤大学, 国際学部教授, 教授 (30467063)
池田 玲子 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 教授 (70313393)
近藤 彩 昭和女子大学, 文学研究科, 教授 (90377135)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 日本語教師 / 越境的学習 / 教師教育 / 日本語教師の専門性 / キャリア・バージョン / 社会バージョン |
研究実績の概要 |
本研究は、日本語教師が他分野へと越境し試行錯誤により学んでいるプロセスを「越境的学習」ととらえ、その実態およびメカニズムを明らかにし、日本語教師の専門性を考察し、今後の越境的な活動を拡大していくための示唆を得るとともに教師研修に生かしていくことを目的としている。 2022年度は、2021年度に出版された書籍『日本語教師の専門性を考える』(ココ出版)のコンセプトおよび本書で提案された「三位一体モデル」を用いて、「三位一体ワークショップ」という形で日本語教師たちに自身の専門性について考え、社会とのつながりを意識し、また日本語教師の周辺の仕事への越境を考えるような場を設定した。このワークショップは、主に本書の執筆にあたったNKS研究会(https://nihongokyoshi-senmonsei.com/)のメンバーたちによって実施された。 今年度はワークショップについては、2つのバージョンを開発、実施した。ひとつは、自身の日本語教師としての専門性について考察しつつ、自身のもつ現在のリソースを検討し、その後の「越境」および「越境的学習」について考え、可視化することを試みた「キャリア・バージョン」である。また、もうひとつは、自身の教育活動が社会の中に埋め込まれていることを意識し、社会の中でどのように実践を展開し、その結果、どのような社会をつくることをめざしているかを考える「社会バージョン」である。 「キャリア・バージョン」については、2022年8月27日から4回にわたり「「日本語教師」の専門性とキャリアについて考える」というワークショップにおいて実践した。「社会バージョン」については、2023年3月に初めて対面にて試みた。また、日本語教育振興協会の研究大会において、これからの日本語教師の自律的かつ内省的な姿勢として「三位一体モデル」を紹介した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
この科研が始まってからずっと続いていた感染症の影響も少しずつ収まり、以前の状況に戻りつつある。2022年度は「三位一体モデル」を使って6回のワークショップを実施した。1回目はアカデミック・ジャパニーズ・グループにおける講演とワークショップをオンラインで、2回目は早稲田大学日本語教育研究科公開オンライン講座ワークショップ型において4回連続で、実施した。6回目は2023年3月に初めて対面でNKS研究会主催で実施した。特に最後のNKS研究会主催は、対面で行ったこと、NKS研究会が主催であったこと、社会バージョンを新規開発したことから、今後への大きな一歩を踏み出したといえる。 また、夏には合宿を実施し、いままでのワークショップのまとめを行ったり、ファシリテーションについて勉強会を開催したりした。 2021年度まで行っていた「三位一体ワークショップ」(これをコア・バージョンと呼んでいる)では、三位一体の一貫性および実践者の理念の明確化に主眼があり、三位一体で実践した場合、周囲(同じ学校内での同僚や制度等)とのコンフリクトまでは射程に入っていなかった。今回、社会バージョンの開発により、社会の中でどのように越境していくかの具体的な活動が可視化できる機会となった。また、オンラインと対面の両方で実施することも経験として蓄積された。2023年度は対面を増やしていく予定である。また、越境者の事例も引き続き収集する。
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今後の研究の推進方策 |
上述のとおり、2022年度はワークショップの改善が図られ、「キャリア・バージョン」と「社会バージョン」が開発され実践された。今後は微修正をしつつ、この2つのバージョンを組み合わせて、日本語教師たちのニーズに合わせて「越境的学習」の実施を推進するためのワークショップをデザインし、オンラインおよび対面で実施していく予定である。 また、越境者への調査としてインタビューを中心に進めていく。今後は、今までのワークショップの開発の経緯についてまとめること、日本語教師という仕事をキャリアとしてみた上でどのように捉えたらよいかをまとめることを計画中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界中での感染症拡大の中で移動が制限され、海外調査が中止になったことが主な原因である。また、国内でも調査およびワークショップがオンライン化されたために移動の出費がなかった。 かわりにオンラインによるインタビューを実施し、情報収集を行った。また、ワークショップも主にオンラインで実施したため移動の出費がなかった。 2023年度は国内国外での対面ワークショップ開催およびインタビュー調査、実地調査などに予算を使用する予定である。
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