• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

ビジネス接触場面における規範とその形成

研究課題

研究課題/領域番号 20K00710
研究機関早稲田大学

研究代表者

武田 誠  早稲田大学, 日本語教育研究センター, 講師(任期付) (40802129)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード接触場面 / インターアクション / 言語管理 / 社会言語規範 / 社会文化規範 / 複線径路等至性アプローチ / 組織社会化
研究実績の概要

2021年度中は、ビジネス場面で用いられる規範の形成過程を、複線径路等至性アプローチにより明らかにする研究課題2を進めた。具体的には、日本にある日本企業に就業経験のある3名の元留学生に対し2回のオンラインでのインタビューを実施し、その逐語訳を切片化して、TEM図を作成して分析し、結果を学会発表した。2回目のインタビューまでの得られた結果の詳細は以下のとおりである。
初回インタビュー実施、等至点を「外国人社員が日本語を用いた実際のビジネス場面において、自らの経験を通して規範を自分なりに意味づける」に変更した。これは、当初設定した等至点では、自身が直接経験していない制度を単に知識として得ることも含まれてしまうためである。
これまで実施したインタビューから3つの社会言語規範と1つの社会文化規範が抽出された。また、それらの規範の意味付け過程は、当該規範を肯定的に評価し自ら積極的に意義を見出す「能動的な意味付け」と、種々の経験を経て最終的に規範の意義を実感する「受動的な意味付け」の二種に分類され得ることが明らかになった。いずれの意味付け過程においても、外国人社員は初期段階では規範の存在やそれに従うことに躊躇や疑問を感じる段階を経ていることが明らかになった。さらに、両意味付け過程においては、価値観が変容するような経験、または何かに得心がいく状態を表す概念とされる、「価値変容点(Value Transformation Moment)」が見られる場合があった。
組織社会化論では、企業が新入社員を組織になじませる力はオンボーディングと呼ばれている。上記の「能動的な意味付け」と「受動的な意味付け」の差異には企業側のオンボーディングや、新人の社会化を促進する上で大きな役割を果たす社会化エージェントが影響している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

研究課題1は当初の予定に基づき実施することができない状態にある。この理由は、1)新型コロナウイルスの感染症拡大により外国人留学生による業務体験を伴うインターンシップを実施する企業の数が減ってしまったこと、2)協力依頼をしていた教育機関のカリキュラム改変によりインターンシップが必須ではなくなり、提携受け入れ先企業での5日間の就業体験研修が中止されてしまったことによる。政府や自治体の感染症対策および企業の動向に注視しながら、調査依頼ができる短期インターンシップ実施企業を探している。
研究課題2は、新型コロナウイルスの感染拡大に起因する遅れを取り戻すべくインタビューと、そこで得られたデータ分析を開始した。インタビュー調査協力者は当初予定していた人数には達していないが、上記のとおり3名の調査協力者に対するインタビューを実施しある程度の分析ができている。

今後の研究の推進方策

次年度は今年度までに終了する予定であった、研究課題2の日系企業等に在籍し、日常的に業務で日本語を使用している外国人社員に対するインタビュー調査を、調査対象者を増やして継続し終了する予定である。インタビュー実施に際しては、組織社会化論での知見も踏まえ、規範の意味付けに至る過程での外的要因の同定の精度を高めたい。
また、インタビュー内容のTEA(複線経路等至性アプローチ)による分析に当たっては、TEM図によって明らかになった規範の意味付けの径路と言語管理のプロセスの対応関係を入念に検討したいと考えている。
なお、初年度に実施予定であった研究課題1のインターンシップ研修に参加する学生および関係者への調査も、当初の計画とはやや異なるが、実行可能な形態で次年度中に開始する予定である

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウイルス感染症拡大と調査協力先の教育機関のカリキュラム改変により、予定していた調査が実施困難になった。また、参加予定であった学会がオンライン開催となったり、インタビュー調査をオンライン会議システムによって行ったりした。これらの理由により、主として調査協力者への謝礼と旅費を未使用のまま繰越すことになった。
今年度までに実施予定であった研究課題2の調査は次年度に実施する。また、今年度実施できなかった調査は当初の計画とはやや異なるものの、次年度中に開始する予定である。このため、繰り越した助成金は次年度請求予定の助成金と合わせて使用予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 日本企業就業初期の外国人社員による社会言語規範・社会文化規範の意味付け過程―複線径路等至性アプローチによる考察―2022

    • 著者名/発表者名
      武田誠
    • 学会等名
      言語文化教育研究学会第8回年次大会

URL: 

公開日: 2022-12-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi