研究課題/領域番号 |
20K00720
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐藤 勢紀子 東北大学, 高度教養教育・学生支援機構, 名誉教授 (20205925)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 文語文教育 / 非日本語母語話者 / オンライン教材 / ブレンディド・ラーニング / オンライン研修 |
研究実績の概要 |
1. 科研メンバーが開講している文語文関連の授業で2021年4月に公開した日本語文語文オンライン教材"BUNGO-bun GO!"を使用し、その効果的な利用方法を探究した。研究成果を国際学会の大会で発表し、大学のセンター年報でも報告した。 2. オンライン教材"BUNGO-bun GO!"に、利用者から要望の多かった朗読音声を組み入れた。Google フォームで作成したテキストごとのクイズについても、利用者の便宜のためPDF版を作成し、掲載した。 3. Zoomを利用した「BUNGO-bun project研究会」を2回開催した。第3回研究会は2021年8月に「漢文訓読教育の意義と課題」というテーマで開催し、東京大学、ヴェネツィア大学、プリンストン大学の事例報告と討論を行った。日本国内30名、国外25名の参加があった。第4回研究会は2022年2月に「くずし字教育の意義と課題」というテーマで開催し、チューリッヒ大学、東北大学、大阪大学の事例報告と討論を行った。国内45名、国外15名の参加があった。各研究会についての報告をオンライン教育関係の書籍と日本語教育関係の学術雑誌に投稿し、掲載が決まっている。 4. 研究者間のより親密なネットワーク形成を目指して、オンライントークフォーラム「かだらいん」を2回開催した。第1回「かだらいん」は2021年6月に開催され、ヴェネツィア大学での実践にもとづく話題提供があった。第2回「かだらいん」は2022年1月に開催、リュブリャーナ大学での実践にもとづく話題提供があった。 5. eメールアドレスリスト“bungonet”を2021年9月にメーリングリスト化し、文語文教育や古典研究に関する情報発信を行い、登録者間の相互交流を促進した。2021年度末における登録者数は101名であり、前年度の57名から大幅に増加している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度までの研究計画として、当初、1)開発・公開した文語文オンライン教材の改善・拡充および利用法の検討、2) 文語文研修システム構築のためのワークショップ参加、3) Zoomを利用した文語文教育関連の研究会の開催を考えていた。 このうち1)については、非母語話者を対象とする文語文関連授業での開発教材の使用を通じてその利用法について検討したこと、朗読音声およびPDF版クイズを掲載して教材を改善したことで、計画どおりに遂行することができている。また、3)についても、これまで4回のBUNGO-bun project 研究会、2回のトークフォーラムをオンラインで開催し、順調に遂行できている。 一方、2)については、ヴェネツィア大学で開催予定となっていたワークショップへの参加を計画していたが、2020年・2021年ともに新型コロナ感染症の拡大により現地開催は中止となり、参加がかなわず、国内で開催された関連のオンライン研究集会に参加するにとどまった。ただし、研究課題の最終目標である研修システム構築の実現に向けて立ち上げたメールアドレスリスト“bungonet”をメーリングリスト化して登録者の拡大に努め、着実に国際的な研究ネットワークを形成している。 以上より、現在までのところ、コロナ感染症の拡大というやむをえない事情により海外研修参加が実現していないことを除いては、ほぼ計画どおりの進捗状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
1. オンライン教材“BUNGO-bun GO!”の拡充を行う。自習にも利用可能な教材とすることを目指して、文法学習のポイントをまとめた資料、練習用の文法ドリルを作成し、掲載する。また、同教材の効果的な利用法を引き続き検討する。研究成果を国内外の学会等で発表する。 2. これまでと同様に、年度に2回のBUNGO-bun project研究会を継続的に開催していく。今後の研究会のテーマとしては、文語文リテラシーの養成、和歌を用いた指導法などを考えている。また、トークフォーラム「かだらいん」も引き続き開催する。 3. メーリングリスト“bungonet”の運用を通じて、文語文教育に関する情報提供や登録者相互の情報交換・意見交換の場を継続的に提供し、文語文教育に関する研究ネットワーク作りをさらに進めていく。 4. 海外の日本研究拠点大学での文語文研修のワークショップに参加してそのノウハウを学ぶ。得られた知見や教育経験をもとに、国内外の非母語話者を対象とした文語文学習支援のための短期研修のシラバスおよび教授法の開発を行う。 5. 研究協力者が所属する国内外の教育機関と連携して、Zoomを利用した文語文学習支援の短期研修を実地に開催し、その効果を検証する。本研究課題の研究成果をまとめ、公表する。なお、コロナ感染症の拡大等により、研修の実施が困難である場合は、文語文法のポイントを解説する動画や文語文を読むための背景となる知識をまとめた資料を作成しオンライン教材に搭載することにより、非母語話者の文語文学習を持続的に支援するシステムを構築することを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
1.当該助成金が生じた状況:研究実績の概要に記述したとおり、新型コロナ感染症拡大の影響により、2021年度にも海外における文語文研修ワークショップに参加できなかった。そのため、国外旅費を使用しなかった。また、研究打合せ、研究会への参加等もオンラインで行ったため、国内旅費も使用しなかった。それらの研究計画を次年度に持ち越したため、次年度使用額が生じた。 2.使用計画:海外でのワークショップへの参加、国内での研究打合せ等のための旅費として使用する計画である。 旅費としての使用が引き続き難しい場合は、オンライン教材拡充のための動画・資料の作成に当てる予定である。
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備考 |
2021年4月に公開した非母語話者を対象とする文語文オンライン教材のサイトである。
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