研究課題/領域番号 |
20K00729
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
和田 礼子 鹿児島大学, 総合科学域総合教育学系, 教授 (10336349)
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研究分担者 |
馬場 良二 熊本保健科学大学, 保健科学部, 研究員 (30218672)
飯村 伊智郎 熊本県立大学, 総合管理学部, 教授 (50347697)
吉里 さち子 熊本大学, 大学教育統括管理運営機構附属グローバル教育カレッジ, 特定事業教員 (20544448)
田川 恭識 神奈川大学, 経営学部, 非常勤講師 (00645559)
嵐 洋子 杏林大学, 外国語学部, 准教授 (90407065)
國澤 里美 群馬県立女子大学, 文学部, 講師 (10802613)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 外国人介護士 / 介護現場における方言使用 / 方言学習教材 / 日本人スタッフとのコミュニケーション |
研究実績の概要 |
2021年度は2020年度の調査を踏まえ二つの質的調査を実施した。調査対象は前年度同様、外国人技能実習生を受け入れている介護老人保健施設に勤務する外国人介護職員と、日本人職員である。 調査の一つ目は日本人スタッフを対象に前年度実施したオンラインアンケート調査「看護・介護の場面でのコミュニケーションに関する意識」の結果を提示し,その要因等について自由記述の形式で答えてもらった。このデータを「同じ職場で働く外国人介護職員の日本語理解についての評価とその要因」という観点のもと分析を進めた。分析の結果、日本人スタッフは、「外国人介護職員が日本語理解の点で日常会話、漢字、専門用語、方言について困難を抱えている」と認識していることがわかった。 二つ目の調査は外国人(ベトナム人)介護職員を対象に前年度行ったベトナム語版アンケート調査(全32項目)の結果を踏まえ、その回答内容やその背景について詳細に聞ききとる半構造化インタビューを行った。インタビューの内容を逐語録にまとめ、SCAT を使用して質的分析を行った。分析の結果,日本語でのコミュニケーションで難しさを感じるのは,業務関連の場面では服薬の説明、入浴を拒否する利用者への働きかけなど「専門用語・知識」を用いた説明、要求・要望の聴き取り、日常生活場面では「方言」を用いた雑談という,具体的な困難場面が明らかになった。今年度の調査、分析の結果は2022年度日本語教育学会春季大会口頭発表に応募し、採択された。 また、教材作成に向けた実質的な作業も進めた。「聞き取り教材」に収録する項目の選定、スクリプトの作成を行い、アプリ開発担当者とアプリの設計について基本的な構造を決定した。この後、録音、アプリ開発を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
介護現場での方言使用実態を調査・分析し、困難点やニーズを明らかにした上で、教材作成に取り組む必要があった。昨年度、新型コロナウイルス感染症予防の観点から介護施設での調査が予定より遅れたため、教材作成もやや遅れている。 また、データベース作成については複数の施設での録音を前提としていたが、部外者の施設への立ち入りが極端に制限されている現状では、音声の収集が非常に難しい状況である。このため、録音資料のデータべースではなく、記述式アンケートによって収集した熊本方言の用例を検索可能な形の資料としてまとめていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、「日本語を母語としない看護・介護者のための方言学習アプリ教材」作成のための作業を集中的に行う。熊本方言での音声録音やアプリ開発を行い、スマホやタブレットにダウンロードできる形で公開する。アプリ完成後は使用テストを行い、外国人介護職員にとって、使いやすいアプリとなっているか、検証作業を行い、必要であれば修正を行う。 また、データベース作成については複数の施設での録音を前提としていたが、部外者の施設への立ち入りが極端に制限されている現状では、音声の収集が非常に難しい状況である。このため、録音資料のデータべースではなく、日本人介護職員から記述式で収集した熊本方言の用例について、よく使われる文法形式、語彙などを言語資料として検索可能な形にまとめる他、聞き取り教材のスクリプトについてもデータに加える。さらに、これらの資料を用いて、文法論、音声学、語用論的立場から分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、研究グループの対面による打ち合わせや作業のための旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症感染拡大の影響で、出張や移動が制限される中、zoom会議システムによる打ち合わせに切り替えるなどしたため、旅費を使用しなかった。今後は成果発表や、対面で行う必要のある打ち合わせのための旅費の使用を計画している。 また、初年度、施設における調査が厳しく制限され、調査の実施が遅れたことから、教材作成が2022年度にずれ込み、アプリ開発に必要な機材の購入も2022年度に持ち越した。2022年度はアプリ開発を進め、完成させる計画である。
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