研究課題/領域番号 |
20K00731
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
佐野 愛子 立命館大学, 文学部, 教授 (20738356)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バイリテラシー / 継承語 / Family Language Policy |
研究実績の概要 |
本研究は複数言語環境に育つこどもたちの高度バイリテラシーの育成に資するため、そうしたバイリテラシーの発達を促す環境要因の特定を様々なコンテクストにおいて探り、その比較を通じてコンテクストに依存する部分と普遍的な部分を明らかにすることを目指すものである。より具体的な研究課題として以下の3つを設定している。 1.海外に暮らす日本語継承語学習者、及び日本国内に暮らす英語を母語とする子どもたちとその家族は、高度日英バイリテラシー獲得のためにどのような選択(Family Language Policy, 以下FLP)を行っているか。 2.研究課題1で明らかになるFLPのうち、コンテクストの影響を強く受けるものにはどのようなものがあるか。どのような環境要因がそうしたFLPに影響を与えるのか。 3.研究課題1で明らかになるFLPのうち、コンテクストの影響を受けない普遍的なものにはどのようなものがあるか。 上記の課題を探求するため、本研究では、CLD児及びその保護者に対するインタビューを行うことがデータ収集の主要な部分となるが、2020年度は新型コロナウィルスの影響により、データ収集や学会参加などの活動がほとんどできないままに終わってしまった。ただ、前科研で収集が終わっていたデータについて分析し、2021年度中に学会発表及び論文の形で発表できるよう準備を進めている。 また、文献調査の部分については、Family Language Policyに関わる先行研究及び理論的な部分の調査に着手し、併せてデータ分析の手法についてもこの研究で得られるデータに最適のものを検討している段階である。これらについても2021年度中に発表の機会を得て、関連する分野の研究者からフィードバックを得ていきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は新型コロナウィルスの影響を著しく受け、移動の制約によって、データ収集や学会参加などの活動がほとんどできないままに終わってしまった。所属する学会もオンラインでの開催ができたものもあったが、開催自体を見合わせたものもあり、情報収集及び意見交換の場が失われてしまったことは研究の初期段階にある計画にとっては大きな痛手となった。 移動の制約によるデータ収集の難しさに加え、また、所属が変わったタイミングでオンライン講義を準備しなければならなくなったことにより、予測できなかったレベルで公務に集中せざるを得ない状況となり、研究の時間は著しく制約された。 2021年度は2020年度分の遅れを取り戻すべく、積極的に研究発表を行い、かつ新たなデータ収集を行っていくべく準備している。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はFamily Language Policyについての先行研究のレビューを続けるとともに、インタビューデータのよりよい分析方法について検討を深める。具体的には、当初から検討していたSCAT(大谷; 2008, 2011)に加えて、複線径路等至性アプローチ(TEA; 安田他, 2015)及びCollaborative Autoethnography (Chang, Ngunjiri, and Hernandez, 2013)の有用性について検討する。これらの手法を用いながら前科研で収集したデータを分析し、その結果を学会報告及び論文執筆の形で発表していくと同時に方法論的な考察も行っていきたい。 加えてコロナウィルスの収束状況にも影響される点ではあるが、状況の許す限りにおいてインタビューの実施をめざしていきたい。そのため、国内で英語を継承語とする家庭に対する調査も視野にいれつつ、実施計画を策定していくこととする。特に、英語を中心とする語学教育に携わっている家庭のFLPと、語学教育に携わっていない家庭のFLPの違いに注目しながらデータを収集したいと考えている。 こうしたインタビューは、子どもや周りの環境を観察するためにも実際に現地で行うことが望ましいと考えているが、コロナウィルスの感染拡大防止の点から移動ができない状況が長引くようであれば、Zoomなどを利用したオンラインの形での実施も視野にいれていくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は新型コロナウィルスの影響を著しく受け、移動の制約によって、データ収集や学会参加などの活動がほとんどできないままに終わってしまった。所属する学会もオンラインでの開催ができたものもあったが、開催自体を見合わせたものもあり、情報収集及び意見交換の場が失われてしまったことは研究の初期段階にある計画にとっては大きな痛手となった。移動の制約によるデータ収集の難しさに加え、また、所属が変わったタイミングでオンライン講義を準備しなければならなくなったことにより、予測できなかったレベルで公務に集中せざるを得ない状況となり、研究の時間は著しく制約された。こうした要因により、研究が大きく遅滞したことが次年度使用額が出た最大の理由である。 次年度は、参加予定をしていたヨーロッパ日本語教師会のシンポジウムや英国日本語教育学会などもオンライン開催が予定されているため、学会参加のための旅費の使用は引き続き少なくなることが想定される。しかし、国内を含め、コロナの状況が落ち着いて可能になればデータ収集を目的とした移動は予定通り行っていきたい。また、状況を見ながらにはなるが、オンラインでのインタビューデータを集めつつ、その書き起こしなどにも予算を充当していき、分析のスピードを上げていきたい。
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