研究課題/領域番号 |
20K00733
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
王 伸子 専修大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10233016)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナレーション / ボイスサンプル / 音声教育 / アナウンス音声 / ストーリーロジック / 動物行動学 |
研究実績の概要 |
本研究は、ナレーション音声による日本語教材を開発し、同時にナレーション音声の音声教育への導入の有効性についての理論的構築を目標とするものであり、2年目にあたる2021年も、教材作成の実践をおこないながら、当該教材の効果について実証的な研究をおこなった。研究の枠組みとしては、従来から述べてきた動物行動学的な学習理論に加え、素材そのものを学習者が積極的に学習したいと感じるエレメントとして、ストーリーロジック(Haven, 2014)を加え、理論的な側面をさらに支えることができたと確信する。「声」を仕事にするプロフェッショナルである人材とのコンタクトもさらに広がり、人材を確保することもできた。具体的にはナレーション会社のナレーター11名に加え、TBS番組制作会社TBSスパークルのアナウンサー2名の協力を得ることができ、ナレーターとアナウンサーの日本語の表現の差異を分析する音声素材の音源を確保することができ、その分析結果を学会で口頭発表すると同時に、論文としても発表できた。また、コロナ禍で対面研修の機会は減少したが、ネットワークを使って配信するということによって、遠隔地の日本語教育現場の教員にも教師研修をする可能性も確認できた。さらに、本研究に着目した出版社からも教材化についての申し出もあった。また、ウェブページ作成については、前述のTBSスパークルが作成を得て、作成に着手できた。また、この研究の成果が研究代表者の所属学部に認められ、ナレーション音声の日本語学的側面を学修する専門科目として「日本語表現論1」(2単位)を、アナウンス音声の日本語学的側面を学修する専門科目として「メディア日本語論2」(2単位)を開設することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度には、次の4点を計画していた。 (A)パラメータを設定したナレーションボイスサンプルの原稿作成と録音。(B)ナレーションボイスサンプルの授業への導入と効果の研究。(C)ナレーションボイスサンプルの量と学習者の聴覚フィードバックの観察。(D)教師研修の実施。(E)情報発信 (A)については、音声的なパラメータを明確にした原稿を作成し、それを録音するということであり、今年度はプロのナレーター5名に、研究のための録音素材の作成を依頼し、1本2分程度の録音を作成した。(B)については、実際の授業が、オンラインでも対面でも運営できるという状態になったため、以前のように授業への導入も可能になったので、ボイスサンプルを活用した指導を実施できた。日本語教育の授業については、まだ入国できていない新入生が一定数いたため、全授業をオンラインで実施し、ボイスサンプルを教材とした授業もオンラインで実施した。(C)も、同様に、オンラインでのやり取りで実施した。(D)については、対面については引き続き厳しい状況であったので、本来は国内外で実施するという計画であったが、オンラインで、ある程度はおこなったが、十分にできたとは言えない。とくに海外に移動することもできなかったので、今後、実施したいと考えている。最後に(E)であるが、音声配信という方法でも情報を発信したり、学会での口頭発表にオンラインで参加し、伝えることができた。その結果、出版社から教材化の提案を受けることもできた。また、簡単に作成していたウェブサイトを、テレビ制作会社の協力を得られることになった、というところまでが年度内の動きであったが、これについての具体的活動は、令和4年度に続けて行っていく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度には以下のように計画している。 (A)日本語音声の特徴と学習上の問題点の研究、(B)「ナレーションボイスサンプル」の形式と効果の研究、(C)「ナレーションボイスサンプル」の作成と指導案の提案、(D)研究集会とワークショップの実施、(E)情報発信 (A)については、引き続き日本語の音声の韻律的特徴、母音・子音等の特徴について録音素材を収集しながら、観察および研究を続けていく計画である。(B)については、作成した「ナレーションボイスサンプル」を用いて、学習者が伝えたい内容を適切な音声で表現できるように音声コントロールを習得できたかという研究と、新たにストーリーロジックという理論的側面から、学習者が興味を持つ内容についても研究する予定である。これについては、英語教育で研究が進められているストーリーロジックを先行研究として、すでに着手している。(D)については、とくにオンラインを利用した研究集会とワークショップを計画している。プラットフォームとしてはzoomを使用する。最後に(E)については、まず、学会の口頭発表でこれまでの成果を発表するということと、これまでの簡単なウェブサイトを構築しなおし、外部からもアクセスしやすいウェブサイトに作り直すということを、年度内に行う予定である。これについては、TBS制作会社の協力を得られることとなっている。 また、以上の総合的な研究成果を活かしたものとして設置した、学部の専門科目「日本語表現論1」「メディア日本語論2」の授業を実施しているが、多くの履修者を得ているので、引き続き力を入れていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外での成果発表、およびワークショップを実施するための旅費を予算として計上していたが、コロナ禍により国内および海外渡航の移動ができなくなったため、予算の執行ができなかったため。次年度も、予定通りに執行できる目途はまだ立っていないが、同様のワークショップはzoom等のプラットフォームを利用して実施する計画を立てている。 また、より多くのナレーション録音を作成し、ウェブ上でアクセス可能なものを構築する計画である。
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