研究課題/領域番号 |
20K00740
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
イ ヒョンジョン 沖縄国際大学, 産業情報学部, 教授 (50511169)
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研究分担者 |
安藤 由美 沖縄国際大学, 経済学部, 准教授 (00433623)
西山 千絵 琉球大学, 法務研究科, 准教授 (20633506)
上江洲 純子 沖縄国際大学, 法学部, 教授 (60389608)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 結婚移住女性 / 多文化家族 / 多文化共生 / 日本語教育推進法 / 日本語支援 / 沖縄離島地域 |
研究実績の概要 |
本研究は、沖縄の離島地域の宮古島市における結婚移住女性に対する日本語支援の面に焦点を当て、施行された「日本語教育の推進に関する法律(以下、「新法」と呼ぶ)」に基づき、今後提供すべき具体的な日本語支援策を模索・提言することを目的としている。 2023年度は、①多文化共生推進における先進地域への聞き取り調査、②宮古島市における小規模のセミナー開催および聞き取り調査等を実施しながら、結婚移住女性に対する具体的な支援内容と方向性を多角的に検討・解明しようと努めた。 ①の調査は、2022年度の外国人在留支援センター(フレスク)での調査で新法をめぐる多文化共生推進の政策が進んでいる地域として名の挙がった長野県での聞き取り調査である。調査からは、入管や法テラスなどと連携し「出張相談会」等を行う長野県の取り組み事例や、上田市における5つの日本語教室の運営状況等を確認することができた。特に、松本市では、子どもへの日本語支援の拠点として日本語教育センターを設置している点や、多文化共生のキーパーソンを育成するために日本語教室を細分化している点は他地域では見られない事例として参考になった。 ②の調査は、これまでのセミナーで浮き彫りになった問題点である結婚移住女性たちの「日本語力のばらつき」について、より詳細な日本語力の把握と支援内容の方向付けの必要性から試みた少人数セミナーの第2弾である。前回のフィリピン出身の結婚移住女性を対象にしたセミナーに続き、今回はベトナム出身の女性たちを対象として行った。結果、来日時期による日本語力のばらつき問題の改善余地や、一人ひとりのニーズに対応できる支援内容および支援の在り方等に関する一定のヒントを得ることができた。 以上の調査を進めるにあたっては、研究グループ内で計8回の研究会を持ちながら、調査実施前後における十分な情報共有と意見交換に努めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究2年目まではコロナ禍により県内外における調査等に支障が生じていたものの、研究3年目からは調査を再開し、今年度も県外調査として多文化共生の先進地域である長野県(長野市、上田市、松本市)にて実地調査を行うことができた。また、県内調査においても宮古島市での小セミナーの開催および結婚移住女性たちへの追加の聞き取り調査等も実施できた。しかし、これまでの調査に基づく十分な考察および提言作業までには至っていないことで、令和6年度まで研究期間を延長している状況を踏まえて「(3) やや遅れている」とする。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は研究最終年度として、これまでの調査結果を踏まえて、沖縄の結婚移住女性に対する適切かつ具体的な日本語支援策等の在り方を検討・提案するために、研究代表者および分担者で定期的に研究会を持ちながら、以下のように分担・遂行していく予定である。 イは、引き続き代表者として研究全般を支えながら、追加調査の検討および準備を進めていくとともに、これまでの研究成果を提言につなげていくための情報共有の一環として新法による日本語教育現場の変化等に詳しい専門家を招いた研究会等も必要に応じては検討する。また、これまでの調査で浮き彫りになった結婚移住女性の「日本語力のばらつき」問題を踏まえて、どのような日本語支援の在り方が望ましいかを具体化していく。 上江洲は、これまで調査を進めてきた各都道府県における新法施行後の新たな施策・事業の進捗状況や日本政府が推進してきた在住外国人政策の進展状況について、研究最終年度時点における現況をとりまとめるとともに、これらの施策による効果について総合的な分析を行う。 安藤は、必要に応じて追加のセミナーを開き、年金等の知識の普及を図るとともに、個別相談にも対応することで、女性たちの日本語力と情報獲得の関連についてみていく。また、外国人在住者に対して有用な情報を効率的に発信されている他地域の事例等も調査していく。 西山は、これまで調査した地方自治体の多文化共生施策や事業の推進状況などの情報更新や、研究最終年度時点における、結婚移住女性に対して実施した日本語支援セミナーについて効果や追加のセミナーの必要性等を検討する。あわせて、日本語支援の場で必要とされる個別の支援のテーマ、行政の相談体制へのニーズについて追跡調査を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた主な理由としては、今年度においては計画通り研究調査等が進んだものの、コロナ禍による研究2年目までに実施できなかった調査活動の遅れが影響したと言える。つまり、本研究の遂行における最も大きな割合を占めていた旅費が2021年度まではほぼ発生しなかったことに起因する。 次年度は、研究最終年度における研究結果に基づく提言に向けて、県内外の実地調査の追加および研究成果の発表等に未使用額を充てながら研究遂行に努める予定である。
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