本研究の目的は,英語学習者を対象とした実験や調査により得られた英作文・英文読解・学習ログなどから構築されたデータベースを用いて探索的な分析を行うことにより,調査目的に応じた各データの処理方法や分析手順・手法について検討するとともに,英語学習者特有の行動の特徴や傾向,ならびに,英語の母語話者との類似点を明らかにすることであった。 2023年度においては,2022年度までの取り組みを継続し,英語学習者から得られたデータであり,なおかつ,複雑な手続きを経ることなく利用可能なオープンデータとしてどのようなものがあるかを調査した。2023年8月には,EuroCALL 2023という国際会議にて,日本人英語学習者から得たオンライン教材の利用履歴などのデータの探索的分析を行い,学習者の自律的学習の態度にかかわる研究発表を行った。また,英語学習者による読解時の視線計測実験で得られたオープンデータが公開されていることがわかり,そのデータベースを探索的に分析した。当該データベースについては,利便性や再現性を高める試みがなされており,データ公開に際して踏襲すべき事項があることがわかった。これらの結果について,2024年2月に統計解析環境のR言語にかかわる国内の研究会にて報告した。 第二言語習得研究向けの認知モデリングに必要とされるデータとして,読解にかかわる視線計測データや語彙テストなどの解答データなどが必要となるが,研究期間全体を通して情報収集やデータ収集を計画通りに進めることが困難となる事態が生じつつも,実験データや統計解析に用いられるコードなどの共有サイトなどから得られたデータを探索的に分析することにより,英語学習者が特定の文法項目における処理上の困難さが見られること,学習者の習熟度によっては,英語の母語話者と類似した処理を行い得ることを明らかにした。
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