研究課題/領域番号 |
20K00752
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中川 純子 お茶の水女子大学, 外国語教育センター, 研究協力員 (80645961)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 発音教育 / E-ラーニング / ドイツ語教育 / オンライン授業 |
研究実績の概要 |
今年度の成果としては、ウェブ発音学習教材の制作を進め、1) YouTubeで2つのチャンネルを立ち上げたこと、そして、本科研の課題である2) 発音を学ぶ意義、到達目標について、被験者へのインタビュー分析を進めたことである。1)については、元々本研究は日本語母語話者向けとして出発したが、先行して制作しているウェブ教材の使用状況分析から、広く世界のドイツ語学習者に汎用性があることがわかり、YouTubeについても日本語母語話者向けとは別に、ドイツ語で発信するサイトも立ち上げた。並列して2つのサイトを持ったことで、両サイトの各ビデオの視聴回数に大きな差があることがわかり、日本語母語話者の学習傾向・嗜好傾向が浮き彫りになった。今後の教材開発を効果的なものにするためにも、引き続き2つのサイトに並行してコンテンツをあげ、視聴者動向の観察を続けていきたい。2)については発音学習の目標や意義について、これまで発音の問題として取り上げられてこなかったコミュニケーション上の問題にも発音が関わっていることが明らかになった。 さらに教材開発については、コロナ禍で延期されていた発音教材の録音作業の一部をドイツで行うことができたことが前進であった。 本研究の柱の1つである、発音教育を継続的に授業に取り入れ、評価の枠組みを提案するという課題に関しては、パイロット実験的な実践的取り組みを大学の授業を通じて行うことができた。まだ試行錯誤段階ではあるが、一定の成果が見られたことから、次年度も方法などを改善しながら継続して実践研究を続けたいと考えている。 教材を授業で利用した実践研究、デジタル教材開発の成果、また発音教育の目的についてはそれぞれ国際学会等にて口頭発表を行った。さらに、教師教育の問題点をドイツ語教育専門学術誌に論文として発表し、査読の過程で高い評価を受けることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の目的は、①発音を学ぶ意義または発音教育の目的とは何か。②レベルごとの学習内容と到達目標はどのように設定すべきか、③レベル目標の達成はどのように測ることができるか、を明らかにすることである。①については、インタビュー分析を順調に進めており、現時点までの研究成果の発表も口頭および論文の形で行うことができた。②については、授業実践を通じて検証を始めたところである。③については、②とも関係することだが、コロナ禍によって人とのコミュニケーションのあり方にも変化が起きていること、学習環境にインターネットが組み込みやすくなったことから、当初の計画の見直しが必要となり、自律学習や反転授業などと組み合わせた教授法など、時代の要請に見あった新たな方向性を探っている最中である。
研究2年目の2021年度も、コロナの感染状況が安定しなかったこと、加えて春にドイツに渡航して行おうと思っていたことが、ウクライナ戦争の勃発で渡航を見合わせることになった。このようなことから、計画が立てづらく、立てた計画を実行に移す段になっても修正に迫られることが多いなど、安定した調査研究ができたとは言い難い一年であった。ただ、コロナ禍が始まった昨年度に比べれば、現状に合わせて相当程度研究プロセスや内容の見直しを行なったこともあり、制約がある中でもできる限りのことをしたと言える。昨年度から教材の重点を書籍や紙媒体からインターネット上のウェブ版に置いており、これまでに作成したホームページを拡充し、さらに新たにYouTubeチャンネルを立ち上げ、教材制作を進めてきた。人と直接会うことが難しかったことから、会わなくてもできる仕事、また会わなくても済むようなやり方を模索し、まずはできることからやるようにしてきた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、今の段階でコロナの状況が良くなってきていることから、これまで後回しにしてきた、現地での録音や、ドイツ在住の研究者との交流なども積極的に進めたい。一方、シラバスや評価方法については、研究の集大成に当たることから、本来ならそろそろまとめに入らなければならない時期なのだが、さまざまな遅れからはっきりとした見通しは立っていない。制約があるなか、研究のやり方を変えたり、研究の方向性の見直をしたりなど、状況に合わせた調整をしながら、最終的には少しでも当初の研究目的に近づけていきたい。これまで同様、口頭発表と雑誌への論文発表なども適切な機会を見つけてエントリーしてく予定である。 また、本研究で導き出した発音教育の方法論について他言語においても汎用性があることを確認するため、一部で実験的に、日本語教育者と共同で研究分析を行なっている。これについても引き続き連携して行なっていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
資金の用途がドイツでの録音や研究者との打ち合わせを目的としたものであり、コロナ禍およびウクライナ戦争により、渡航が不可能になったことから次年度に持ち越された。
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備考 |
(1)(2)は本研究の成果としての発音学習用ウェブサイト、(3)(4)はこれに対応した、YouTubeチャンネルである。また(1)(3)は日本語母語話者以外、広く世界に向けた学習教材で、(2)(4)は主として日本語母語話者を対象としている。
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