研究課題/領域番号 |
20K00752
|
研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中川 純子 お茶の水女子大学, 外国語教育センター, 研究協力員 (80645961)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 発音教育 / 教材開発 / 教師教育 / オンライン教材 / ドイツ語教育 |
研究実績の概要 |
今年度の成果としては、ウェブ発音学習教材の制作を進め、 YouTubeで立ち上げた2つのチャンネルにコンテンツを追加していったことが挙げられる。元々本研究は日本語母語話者向けとして出発していたが、これに続く形で日本語を母語としない学習者や教員を対象に、2022年にドイツ語で発信するサイトを立ち上げた。今年度はこれを日本語サイトと同様レベルに上げるためのコンテンツ作りを主として行ってきた。 教材開発研究については新たなインタビューを実施した。教材作りの要となる考察の一環として、一人はオーストリア人ドイツ語教師、もう一人は方言色の強い地域の出身であるドイツ人教師二人にインタビューを行い、身につけるべき発音についての意識を探ることを試みた。これについても2023年度に分析を終えたいと考えている。 さらに発音教育を継続的に授業に取り入れ、評価の枠組みを提案することを目指し、パイロット実験的な実践的取り組みを大学の授業を通じて行った。授業において一定の成果があると確認できたことから、2022年度の実践結果について2022年10月にGoethe-Institutが世界のドイツ語教師を対象に毎年行っているオンライン学会Die GETVICO24、ならびに2023年3月にはドイツのブレーメン大学での学会8. Bremer Symposion zum Fremdsprachenlehren und -lernen an Hochschulenで口頭発表を行った。いずれの口頭発表の際にも、多くの質問、意見、今後の実践についての建設的なアドバイスを受けることができ、大変有意義であったと共に、発音教育に関する海外のドイツ語教師の関心の高さも感じることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題の目的は、①発音を学ぶ意義または発音教育の目的とは何か。②レベルごとの学習内容と到達目標はどのように設定すべきか、③レベル目標の達成はどのように測ることができるか、を明らかにすることである。①については、私が勤務する大学に研修生として来ていたドイツ人とオーストリア人の教師にインタビューすることができた。現在そのインタビュー分析を進めているところである。②については、授業実践を通じて検証を進めている。③については、②とも関係することだが、コロナ禍によって人とのコミュニケーションのあり方にも変化が起きていること、学習環境にインターネットが組み込みやすくなったことから、当初の計画の見直しが必要となり、自律学習や反転授業などと組み合わせた教授法など、時代の要請に見あった新たな方向性を探っている最中である。 研究3年目の2022年度は、コロナの感染状況がようやく落ち着き、ずっと延期していたドイツ在住の研究者と共同で教材の録音を行うことができた。まずはYouTube用のコンテンツ完成を目指し、できたところから録音作業に入った。録音後はコンテンツ制作技術者と協力し、YouTubeへの動画のアップロードを順次行なっていったが、年度内には全ての作業を終わらせることはできず、翌年度への持ち越しとなった。教材開発研究に関しては、2022年10月にGoethe-Institutが世界のドイツ語教師を対象に毎年行っているオンライン学会Die GETVICO24、ならびに2023年3月にはドイツのブレーメン大学での学会8. Bremer Symposion zum Fremdsprachenlehren und -lernen an Hochschulenで口頭発表を行った。2023年のブレーメンの学会はコロナ後に初めて開かれた対面の学会であり、有意義なフィードバックを受けることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は最終年度となる。ドイツの研究者との協力については、今回の研究ではコロナ禍に翻弄され、計画の変更を余儀なくされる中での研究であったが、今年度も引き続き教材開発研究をできる限り推し進めていきたい。まずは今回の研究計画で目指してきたYouTubeコンテンツ完成を目指して引き続き作業を進めたい。コロナが落ち着いてきた一方で、ウクライナ戦争に伴うドイツの物価の高騰、対ユーロの円相場の急落など新たな問題が発生し、当初の予算でどこまで現地の研究者の協力のもとで研究が続けられるか不透明なところがある。これまで同様、社会情勢を見ながら柔軟な対応をしていく。 外国語教育の実践の場である授業については、コロナ禍を経て反転授業、オンデマンド型授業、ZOOMを用いた遠隔授業などさまざまな形態が複合的に用いられるようになっており、本研究での教材開発研究もこうした変化に対応するあり方を柔軟に探っていく。これについて2022年度において私が勤務する大学のドイツ語クラスでパイロット実験を行い、データ収集を終えたところである。6月には日本独文学会春季発表会にて、ワークショップを予定しており、本研究で開発した教材を授業の中に組み込む形を提案し、参加者からのフィードバックを得て、研究の検証をおこなう予定である。最終的には、教材を教育に組み込むための教師の手引き、シラバスの完成を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画はコロナ禍により押し気味であるが、さまざまな要因を見直し、当初の計画からは若干修正した形で概ね順調に進んでいる。今年度も引き続きドイツの研究者との連携には不確定要素が伴うが、情勢を見ながら最善を尽くしたい。今年度は計画の進捗状況を見ながら、教材の完成のため、ドイツへの出張、教材のための録音を計画しており、それに伴う諸経費が必要となる。またオンラインコンテンツ制作者への謝礼も支払う予定である。
|