研究課題/領域番号 |
20K00757
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
小林 薫 東京農業大学, 生命科学部, 准教授 (50804019)
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研究分担者 |
萩原 明子 東京薬科大学, 生命科学部, 准教授 (50266904)
内藤 麻緒 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (30410062)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | コーパス分析 / メタディスコース / 論文指導 / 英語教育 / 生命科学 |
研究実績の概要 |
昨年度の目標はコーパスの構築(①目標言語コーパス、②研究者コーパス、③学生コーパス)のためのデータ収集開始だった。①は、生命科学部の中でも研究者らが所属する機関で扱っているテーマを網羅するべく、遺伝子、動物、植物、再生学、食品、神経、生化学、有機化学、免疫、分子生命科学の分野からそれぞれ40から80、計480の実験論文(IMRDで構成されているもの)をPDF形式でダウンロードし、テキストファイルに変換している。収集の際は、それぞれの分野のジャーナルからIF値の高いものと低いものを偏りの無いように10選び、それぞれから研究者名、所属機関の所在地を手掛かりに(ア)日本人研究者によるもの、(イ)日本人以外のアジア系研究者によるもの、(ウ)ヨーロッパ系の研究者によるものを1:1:2の割合で収集した。収集した論文を整理するために購入したソフト(EndNote)を使用した。 このコーパスを使用し、論文タイトルとメタディスコースの予備的な分析を行った。現在、収集したデータの見直しを行っている。 ②は、本研究の研究者である3名がそれぞれの所属機関(全て生命科学分野)に所属する研究者に研究目的を説明し研究協力の同意を得た上で、上記のいずれかの分野かにおいてすでに出版された論文の校正前の原稿の提供を受けた。現段階で遺伝子、動物、植物、食品、有機化学、分子生命科学の分野から計89の校正前原稿が収集できている。これらも論文のセクションごとにサブコーパスを作成している途中である。 ③はコロナ禍のオンライン授業で予定通りデータを集めることはできなかったが、今年度の授業で収集する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究者コーパスのテキストファイル化のためにアルバイトの学生を雇う予定であったが、コロナ禍で11月後半から1名のみ雇うことができた。このため作業の進行がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
まずはコーパス①②の構築を完了する(FileMakerで管理)。それぞれのコーパスからメタディスコース(code glosses、endophoric markers、frame markers、attitude markers、boosters、self mention、engagement markers、hedges)の出現頻度を分析し(Word Smith Toolsを使用)、考察する。最終年度までの研究トピックは以下の通りである。 今年度-1:①目標言語コーパスに含まれる三つのサブコーパス(上記(ア)(イ)(ウ))におけるself mentionである一人称 “we”の用法(頻度、出現箇所、共起する動詞)を調べ、著者の言語背景がその使用に影響を与えるかどうかを考察する。 今年度-2:一つ目の結果を踏まえ、非母語話者(日本人)の中間言語における一人称 “we”の用法を②研究者コーパスを用いて分析する。 今年度-3:③のコーパスのためにデータを収集する。データはテキスト処理を施しコーパスとして使用できる形式に整理する。 最終年度:上記5種類のメタディスコースを①目標言語コーパスから抽出し、頻度の高いメタディスコースマーカーを同定する。これらのマーカーの②③のコーパスにおける使用頻度を調べ、中間言語における過剰使用・過少使用されるメタディスコースマーカーを同定し考察する。さらにこれらのマーカーがムーヴの中でどう使用されているかを分析する。結果に基づいて、生命科学系メタディスコース学習モデルを提案する。出版経験が豊富な日本人研究者に、意識的に使用しているマーカーについてインタビューを行う。その結果と前年度の分析結果をあわせて、第二言語習得論から評価を加え、日本人のメタディスコースの学習プロセスを解明する。最終的に 具体的なメタディスコース学習指導案を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はコロナ禍のため、コーパス構築のためのデータ収集が遅れたためコーパス構築のためのパソコン(¥300,000)とOCRソフト(Acrobat¥30,000)の購入費及び資料作成入力費(¥22,613)、データ分析に必要なWord Smith Tools(¥27,000)の購入、論文執筆に伴う校閲費(¥60,000)は令和3年度に繰り越すことになった。
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