研究課題/領域番号 |
20K00765
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研究機関 | 関西福祉科学大学 |
研究代表者 |
松本 敦 関西福祉科学大学, 心理科学部, 講師 (20588462)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 脳波 / 外国語能力 / 一般線形モデル |
研究実績の概要 |
これまでの研究において外国語の能力と脳波の反応はいくつかの研究で行われている。先行研究では主に脳波の一部である事象関連電位(ERP)が用いられてきた。ERPの研究では特定の刺激に対する反応を計測するために刺激を時間軸上で離散的に(刺激を一定間隔をおいて)呈示することが常であった。本研究では自然な会話やスピーチ音声を聞かせることによって発生する脳波信号から,音声が含んでいる様々な要素(例えば,単語,音素,強弱)に反応する脳波反応を吟味し,その反応から外国語能力を予測することを目的としている。 昨年度は脳波を用いた外国語能力の評価のための研究を行うために205名の日本語母語話者が英語のスピーチを聞いている際の脳波を記録し,スピーチ刺激に含まれる単語の生起タイミングをモデル化することによって聴取中のスピーチに含まれる単語に対する反応を推定した。実験参加者は流れてくる英語音声を聞き取り,理解しようするだけで特に課題は求めなかった。脳波実験終了後にはリスニングのテストを行い,すべての参加者のリスニングスコアを算出した。 推定にあたっては一般線形モデルを用いて重複する脳波成分を分離することを可能にしている。単語は品詞や文中での位置,スピーチのスピードなど様々な要素に分解してうえで実験参加者の外国語能力によってこれらの反応がどのように変化するかを検討した。参加者を外国語能力の高低によって2つの群に分け比較を行った結果,一般名詞やopen class wordと呼ばれる強い意味を持った単語に対する意味処理を反映する成分が現れる潜時が高能力者では早く,その振幅も大きかった。また注意を反映する成分にも違いがみられ,これらの処理の違いが外国語の理解に影響を与えている可能性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは計画通り進行しているが新型コロナウィルスの影響で若干進行に遅れた部分もあった。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず計測されたデータからリスニング能力を予測するための統計学的モデルを構築する。統計モデルが構築できれば,新しく取得されたデータから外国語能力を予測することが可能になる。また,外国語能力の様々な側面を反映する脳波成分の反応に関してそれぞれ独立に統計モデルを構築することにより,総合能力だけでなく,音素の聞き取り能力,単語認識能力,文脈把握能力などの能力を個別に予測することが可能になる。これらの結果から外国語能力評価システムの確立を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験参加者の謝礼金が当初予定よりも少なくなったため使用金額に変化があった。また,新型コロナウィルスにより学会参加が困難だった。さらに参加者を追加等するために使う予定である。
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