研究課題/領域番号 |
20K00767
|
研究機関 | 阿南工業高等専門学校 |
研究代表者 |
勝藤 和子 阿南工業高等専門学校, 創造技術工学科, 教授 (50363130)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 学習ストラテジー / 自己調整学習 / 学習感 / 自己効力感 / 英語学習 / S2Rモデル / 質問紙 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、自己調整学習理論、学習感、自己効力感などの概念を援用した学習ストラテジーに関する国外・国内の文献の精査をさらに進め、これらの文献を参考にした英語学習ストラテジー調査のための質問紙を試作・試行した。 私が、特に注視しているのは、Oxford(2011)が提案した自己調整学習理論を援用したS2R モデル(方略的自己調整モデル)である。Oxfordは、90年代に多くの研究者によって盛んに用いられたSILL(言語学習ストラテジー調査紙)の発案者だが、その後一部の研究者から心理測定学的批判を受けて,S2Rモデルを発表している。S2Rモデルでは,意識的に目標に向かう取り組みとして自己調整学習ストラテジーを位置づけており,その枠組みは,認知,情意,社会文化・対話領域にまで拡張されたところが総括的である。各領域のストラテジーはメタストラテジーによって指揮され,言語学習プロセス全体は二層構造で組織化されている点も斬新である。また、S2Rモデルは第二言語習得の学習ストラテジーに特化しており、研究の焦点が英語学習に取り入れやすいことも注目に値する。現時点では、数名の海外の研究者がSILLやMSLQ(学習動動機づけストラテジー質問紙)を取り入れてこのモデルを基にした質問紙を作成実施し、集めたデータに関する研究を発表している。これらの研究には批判すべきところも大いにあるため,本研究ではそれらを批判的に考察し、新たな質問紙を考案した。現時点ではパイロットの段階であるが、この高等学校レベルの英語学習者を対象にした「自己調整学英語学習ストラテジー質問紙」を試行し,その信頼性や妥当性,学習到達度や熟達度との関係について検討している。S2Rモデルの枠組みの中で因子分析も進行中である。今後は、改良を重ね、最終的な質問票を作成実施し、データを分析・考察した上で、読解指導教材について提案したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献精査については,海外の文献などを読み進め、概ね順調にすすんでいる。 質問紙については,OxfordのS2Rモデルに基づいた質問項目となるように、類似の過去の文献における質問項目を比較精査し、パイロット的な質問紙を作成した。この質問紙は、SILLやMSLQ(Pintrich, 1995)を取り入れ,高等学校レベルの英語学習者を対象にした自己調整学習ストラテジーについての質問紙となっている。この質問紙を高専1年生を対象に試行し,その信頼性や妥当性,学習到達度や熟達度との関係について検討した。質問紙の結果データとS2Rモデルの枠組みの中で因子分析も試みている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は,まず,パイロットで実施した質問紙で収集したデータを分析してまとめ上げる。信頼性に関しては問題なく、学習到達度や熟達度との関係性についても分析や考察は完了しているが、因子分析については、探索的因子分析や確証的因子分析の両方を視野に入れて、S2Rモデルに沿った分析を目指したい。現時点のパイロット質問紙では、S2Rモデルに合致する因子に到達していないので、質問項目をさらに精査し、取捨選択を重ねたり新項目を加えるなどの作業を繰り返しながら、質問紙の精度をあげ、最終的にはS2Rモデルにできるだけ沿うような質問紙を完成させたい。 特に参考としている文献は、Wang et al. (2012)や Habok & Magyar (2018) の文献である。これらの研究は、S2Rモデルを基に質問紙を考案・実施し、確証的因子分析を行っている。これらを再度批判的に精査し、自分のパイロットの質問紙と比較検討し、最終的な質問紙を作成した上で、確証的因子分析を行い、S2Rモデルと自己調整理論を援用した学習ストラテジーに関する考察をまとめたい。 次に,上記の考察を基に読解方略の指導教材を提案する。読解方略指導教材の開発は,読解教材そのものの選定も重要になることから,自身の過去の研究(勝藤, 2014)を参考 に,読解ストラテジー指導教材の検討を行う。可能であれば、リーディングに関するストラテジーの指導教材とリーディング指導案を計画・実施し、実験群と統制群に分けて読解方略指導の効果を測るところまで達成したい。収集した記録を質的・量的の両側面から分析し、これらの分析を考察し,教育的提案を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アルバイト学生を雇って,アルバイトで使用する文房具購入費に充てるための3,150円と考えていたが,コロナ禍の影響でアルバイトを雇えなかった。理由は,対面授業が始まってからも,学生はオンライン授業に追われて多忙だったので、応募に応える学生が見つからなかったからだ。令和4年度は、感染状況も落ち着きを見せているので、アルバイトの雇用を行い、文房具の購入に、この次年度使用額3,150円を使用したい。
|