研究課題/領域番号 |
20K00785
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
飯野 厚 法政大学, 経済学部, 教授 (80442169)
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研究分担者 |
ウィスナー ブライアン 法政大学, 文学部, 教授 (10440257)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 発音教育 / 知覚 / 調音 / HVPT(高変動音素訓練) / CAPT(コンピュータ利用の発音教育) / シャドーイング |
研究実績の概要 |
本研究の目標は、日本人英語学習者の発音における、明瞭性、理解可能性、流ちょうさを向上させるためのコンピュータを活用した指導法の効果を実証的に探ることである。具体的には、コンピュータによる高変動音素訓練(HVPT: High Variability Phonetic Training)とシャドーイング訓練を一定期間施し、事前・事後に音読とスピーキング課題によってその変化を調べ、さらに、HPVT利用に対する学習者の意識についても調べることである。本研究の特徴は、多様なアクセントの英語を聞いて知覚を向上させるHVPTプログラム“English Accent Coach”(EAC)(Thomson, 2017)を用いて処遇する点にある。 1年目の課題は、機能負荷の高い音素を目標としたHPVTとシャドーイングを処遇し効果を測定・分析することであったが、コロナ感染防止のためのオンラインのみによる音声データの取得が困難であったため、現存する過去のデータを用いて可能な範囲で分析を行った。 シャドーイングを本格的に取り入れる指導の前段階として、日本人大学生を対象にした目標音素の調音方法の明示的な説明映像を取り入れた後にEACによるHVPT実施中に目標音素/l/, /r/, /w/を含んだ刺激音(音節・単語・非単語)の復唱を随伴させるよう指導し、10週間にわたりEACによる知覚と復唱訓練を実施した。明示的指導の映像を含まない条件で復唱を随伴させた場合(飯野, 2021)よりも、調音の成功率が5%程度上回る向上が見られた(Iino, Yabuta & Wistner, 2020)。また、HVPT処遇後のアンケート調査から、EACの効果感として知覚能力(76%)と聴解能力(77%)、および調音能力(71%)、復唱への効果(57%)などが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ感染対策のため研究協力者による調音サンプルやデータ収集は、オンライン形式で事前・事後テストなどできる範囲で進めた。しかし、指導期間中の処遇条件、具体的にはシャドーイングの実施方法や録音音声ファイルの提出の徹底など十分に行えたとは言えず、実験的実証を試みるには条件の徹底が難しく、予定していた研究内容を十分に盛り込めなかった。今後、対面での処遇が可能な状況を待って、再度、十分な条件でデータ収集を試みたい。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、1年目の課題を再度実行するよう試みる。限定された学習者集団を対象に、English Accent Coachを用いたHVPTによる測定と処遇、また、処遇に多様な音声モデルを用いたシャドーイングの体験を盛り込み、学習者の成果と応答を測定する。比較対照群が得られない場合は、実験的手法のみのデータを分析し、検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染防止対策による国内、国際学会の中止、およびオンライン開催により、予定していた交通費、航空運賃、宿泊費用などの支出が行われなかった。また、データが十分に取れず分析依頼の費用も支出ができなかった。コンピュータ購入に替えて、部品の交換などによるスペック向上により購入費用が抑えられた。以上の理由から次年度使用額が生じた。2021年度は、音声の書き起こしサービスサイトの利用や人による音声評価の支出を予定している。
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