研究実績の概要 |
2年目においても、コロナ感染防止のためのオンラインのみによる音声データの取得が困難であったため、前半には、1年目同様に2019年度のデータを用いて研究を行った。日本人大学生を対象としてEnglish Accent CoachによるHVPTを実施した。目標音素を無声摩擦音(/f/, /θ/, /s/, /h/, /sh音/)として、調音方法の明示的な説明を映像とともに取り入れ、5週(コロナ禍のため短期間)の初期と終期における知覚と調音の変化を観察した。HVPT中に刺激音を聞いた直後に復唱を録音して提出することを促した。結果として、/f/, /θ/, /s/,/sh音/)において知覚成功率の伸長が有意差1%水準で認められた。調音においては、日本人が苦手とするとされている/f/と/θ/に焦点をあてて検証した結果、/f/における伸長が5%水準の有意差と判明した。一方、/θ/は伸長を示したが差は非有意であった。これらの結果から、5週間程度の集中的な指導で無声摩擦音の識別能力をある程度伸長することが明らかとなった(詳細は発表論文参照)。また、Iino, Yabuta & Wistner(2020)の追研究として、2020年度に6週間の期間で実施したデータを分析し発表した。目標音素を/l/, /r/, /w/とし、発音の明示的指導とEACによるHVPT実施中における刺激音の復唱、さらに目標音に注意を払う指導を伴った通常授業におけるシャドーイングの実施という条件で、知覚と調音の変化を見た。その結果、知覚は12%程度(1%水準)の伸長を示し、調音において10%程度(有意傾向)の伸長を示した(詳細は本年度発表論文参照)。以上の成果から、HPVTを伴った明示的指導(調音映像の活用と授業内シャドーイングにおける発音への意識を高める指導)は一定の効果を見込めることが分った。
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