研究実績の概要 |
4年目は、日本人の英語学習者にとって習得が難しいと言われている英語摩擦音の発音指導に関する研究成果(2023年度RELC学会発表)のまとめを行った。研究課題1として、明示的な調音方法の指導とHVPTおよびシャドーイングによって、日本語を第1言語とする学習者(JLE)は英語の摩擦音の知覚がどの程度伸びるのか。研究課題2として、HVPTと明示的指導にシャドーイングを加えた指導が摩擦音の調音にどのような効果を及ぼすか、についてデータ収集と分析を行った。研究参加者は大学生24名で、クラウドベースの発音トレーニングプログラムEnglish Accent Coach(Thomson, 2023)を使用し、6つの英語摩擦音( /f/, /v/, /θ/,/th有声音/, /sh音/, /z/)と摩擦音と誤認しやすい両唇音/b/の知覚訓練を行った。参加者は週に2回、CV(目標子音+母音)条件とCVC(目標音+母音+子音)条件を100問、1回ずつEACで知覚トレーニングを行った。指導の1週目に目標音素の調音方法を、オンライン上のビデオを使って指導した。指導期間は正味5週間で、各週の授業内で教科書のモデルパッセージの音声をもとにシャドーイング練習を取り入れた。事前・事後テストの結果、全体の知覚率は有意に向上した(CV条件で約10%、CVCで9%)。調音では /f/, /v/,/θ/,/th有声音/を目標音素とし、事前・事後の音読音声の分析から、/v/以外の3つの音素の調音の正確さが有意に伸長した。これらの結果から、外国語として英語を学ぶ日本語第1言語話者にとって、コンピュータを用いたHVPTと明示的な調音指導、シャドーイング練習を組み合わせた指導は、英語摩擦音の指導に効果的であることが明らかになった。
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