研究課題/領域番号 |
20K00789
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
加藤 恒夫 同志社大学, 理工学部, 教授 (60607258)
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研究分担者 |
菅原 真理子 同志社大学, 文学部, 教授 (10411050)
山本 誠一 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (20374100)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 小中学生 / 英語音声 / 追跡的分析 / 無強勢母音 / 韻律評価 |
研究実績の概要 |
日本語を母語とする小中学生の英語音声について身体的・知能的な発達,学習プログラム,言語的背景との関係性を明らかにするため,2016年から数十名規模の英語音声収録を継続してきた.2021年度は新型コロナウイルスが比較的収まった時期に,中学3年生約40名と小学2年生約60名の英語音声収録を再開した. 2019年度に収録を行った中学1年生37名には,国内で日本語による初等教育を受けた生徒(JP),国内で日本語と英語によるバイリンガル初等教育を受けた生徒(BP),外国で英語による初等教育を受けた生徒(EP)がバランスよく含まれ,英語の発音に明らかな違いがあった.そこで,無強勢母音の発音に焦点を当てて3群の比較分析を行った.分析の結果,EPは無強勢母音のスペクトル品質を強勢母音のそれと区別し,一方で無強勢母音の表記には強い影響を受けていなかった.JPは,無強勢母音のスペクトル品質を強勢母音のそれと区別できておらず,一方で無強勢母音の表記に強い影響を受けていた.BPはEPとJPの中間であったが,語によってEPに近い発音とJPに近い発音が確認された. 韻律自動評価手法について,任意の英単語に対して語彙強勢を踏まえた韻律評価を可能にするため,入力の時系列情報間の離れた依存関係を捉えられるニューラルネットワーク技術Transformerを用いる自動韻律評価手法を考案した.日本人大学生による英単語および英語短文発声において,英語母語話者による主観評価値との相関係数を従来の決定木に基づく手法に比べて大幅に改善した. 小学生の英語音声の分析成果について国内学会で2件発表し,自動韻律評価について国内学会で3件発表した.第二言語音声獲得に関する国際会議New Sounds 2022の採録通知も受けたがコロナ禍により現地参加が叶わないため採録を辞退した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍において児童・生徒の安全と正課を優先するため,同志社小学校,同志社中学校,同志社国際中学校における音声収録を2020年度は中止したが,2021年度は同志社小学校と同志社国際中学校において2年ぶりに音声収録を行った. 2016年度から追跡してきた多くの生徒が在籍する同志社中学校での音声収録は継続できなかったが,代わりに様々な言語的背景をもつ日本人中学生の英語音声を収録したので,当面の分析テーマを生徒の言語的背景の影響に移行して進めることとした. 参照用の母語話者音声を必要としない自動韻律評価手法は,Transformerの活用により前年度の決定木学習に基づく手法よりも大幅に精度を改善した.
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今後の研究の推進方策 |
小中学校における英語音声収録は2021年度に新たなテーマを設定して再開したので,2022年度も新型コロナウイルスが収まっている時期を見計らって継続実施する予定である. 音声の分析については,様々な言語的背景をもつ日本人中学生の英語音声について,中学3年間の発音の変化を定量的に分析する予定である. 自動韻律評価手法については,母語話者音声を参照する手法から機械学習手法を活用して発音辞書を参照する手法に移行し,昨年度に記した1)ニューラルネットワーク技術を用いた発音辞書参照手法の高精度化,をTransformerの導入により果たし,2)単語発声評価から文発声評価への理論拡張,へと進んでいる.2)の理論拡張の完成度を高めるとともに,計画通りに3)日本人以外の英語学習者の音声を用いた有効性検証,に進む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表旅費が生じなかったため少額残したが,2022年度に音声データの整備費用として使用する予定である.
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