研究課題/領域番号 |
20K00798
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
アルベリッツィ V.L. 東京藝術大学, 学内共同利用施設等, 助教 (60630910)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | デジタル教科書 / 外国語教育 / ARCSモデル / SAMRモデル / イタリアの州 / 遠隔教育 / 教育工学 / 教材設計 |
研究実績の概要 |
新型コロナウイルス感染症の影響がまだ完全に終息を見ない本年度において,2年ぶりの対面授業の再開は1)学習媒体として,優れたデジタル教科書の満たすべき条件,2)専門知識の養成を目指す大学などの高等教育におけるデジタル教科書の意義とその展望,3)大学生・大人の学習者の関心を惹き,学習意欲を増進させるデジタル教科書・教材を導入したICTを中心とした学習環境の総括的な特徴という,三つの課題を追求するきっかけとなった。 上記の3点を特定するため,本取り組みの中心にあったのは学習過程を促進するデジタルテキストブックの設計と情報の習得を向上させるインタラクティブな要素の開発だった。具体的には,日本ではまだ詳しく紹介されていないイタリアの20州を対象とした,中・上級者向けのデジタルテキストブックを作成し,学習者のレベルを問わず,どの学科にも応用できる普遍的なデザインを持つデジタル教材の設計および開発の手がかりとなり得る具体的な情報・結果を得ることができた。 学習者が容易に理解できるように,学習内容を効率的に配置する必要がある。これは,学習者が既知の情報を活用することで,新しい情報を選抜,整理,統合できるコンテンツの設計によって成し遂げられる。この目的に到達するために,次の三つの方法が有効であると思われる。a. 認知負荷を軽減するために注意を散漫させる要素を最小限に抑える; b. 新しい情報の処理に手がかりとなる要素を配置する; c. 学習内容のモデル化を促進する要素を設計する 上記の原則は言語・視覚の両チャネルを刺激することにより,学習者が作業記憶において効率的に情報を処理することを支援するだけではなく,両チャネルにおいて学習者の積極的な内容処理を促す効果もあり,デジタルコンテンツによる有効な学習体験の構築に資するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の影響に伴い,本研究はやや進行に遅れをきたしたが,その主な原因は下記の通りである。 1)今までデジタルテキストブックの開発に利用していたソフトウェアが製造者により停止された。そのため,代替のソフトウエアを見つける必要性が生じた。現時点で選択は二つの製品に絞られているが,その使用方法を新たに身につけるためにそれなりの時間が必要となる。 2)環境設備の基盤は比較的整っていたものの,デジタル教科書の作成にあたって,教科書の構成素であるマルチメディアの編集と制作などのため,ノートブックコンピューターとコンテンツを確認するためのタブレット型端末の購入を予定していたが,デジタルプロセッサーなどの調達が困難になったため,性能のいい製品の発表までその購入を必然的に見合わせることとなった。 同じ理由で,学習者に提供する予定のタブレット型端末やほかの器具の購入も見送られている。 更に,対面授業は復帰したが,遠隔受講も認められていたため,報告者のエフォートは学習者がどこからでも円滑にアクセスできるハイブリッド型の学習環境構築(リアルタイムおよびオンデマンド形式)に注がれていた。 そのため,研究期間の一年間延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
延長の一年間で得たデータを基に作成されたコンテンツの見直しを図り,改善し,公開する。更に,上記の定量的・質的データが示すデジタル教科書の有用性・有効性について考察し,状況が許す限り国内外の学会で発表するほか,いくつかの学会誌への投稿も考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行に伴い,予定していた旅費や物品の購入を見合わせたためである。次年度は本研究の実施に当たり,計画通り,購入を企図していた物品などに使用する予定である。なお,感染状況などにより,学会(特に海外において)への参加などが困難な場合は,旅費の予算は図書や設備備品に充てる所存である。
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