本研究は、当初日本の高校における「社会に開かれた」ロシア語教育体制の構築を目指し、日本でロシア語を学んでいる高校生を対象として、日露交流や留学における第2言語習得過程と異文化理解能力の相関性を明らかにすることを目的としていた。しかし、新型コロナウィルス、及びロシア軍によるウクライナ侵攻によりロシアへの渡航が中断され、ロシア語学習者を取り巻く学習環境が一変した。高校のロシア語教育は続けられているものの、日露交流はオンラインに切り替えられた他、旧ソ連諸国との交流が新たに始まっている。交流先がロシアから多言語地域であるロシア語圏に拡大したことで、学習内容もロシア語、ロシア文化だけでなく、複数言語・複数文化を取り上げる必要性が生じている。本プロジェクトでは、このような社会情勢の大きな変化を踏まえ、多言語性をロシア語学習に活かす方法としてバイリンガル教育研究において注目されているトランス・ランゲージング教授法を検討し、その活用の可能性を指摘した。具体的には、日本の高校におけるロシア語教育の置かれている学習条件や文脈を精査した上で,トランス・ランゲージング・スペースの構築方法や学習方略を一つ一つ検討することで、高校のロシア語の授業における複数言語の活用方法とその意義,より広くは日本の外国語としてのロシア語教育における多言語性について論じることができた.以上のような研究成果を踏まえて、最終年には高校生向けのロシア語の教科書を開発した。
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