研究課題/領域番号 |
20K00827
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
名畑目 真吾 筑波大学, 人間系, 助教 (60756146)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 英語教育 / リーディング / 視線計測 / 文章理解 / 心理言語学 / 計算言語学 / 自然言語処理 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,日本語を母語とする英語学習者が文と文をつなげて文章を理解するプロセスを,文の因果的・意味的な関連に着目し,読解中の視線データの解析を通して解明することである。視線計測を活用することで,従来の研究よりも自然な読解環境を再現し,文間の読み戻りを含む柔軟な読解プロセスを測定することが可能になる。 研究期間1年目である本年度では,2文1組の英文を用いた実験を行った。これらの英文は1文目と2文目の因果的な関連度(書かれた内容の因果関係の強さ)と意味的な関連度(単語や文が表す意味概念の類似度)が操作されている。因果的な関連度はクラウドソーシングによる100名以上の英語母語話者による評定値に基づいて算出され,意味的な関連度はコーパスと統計解析に基づく潜在意味解析 (latent semantic analysis; LSA) によって算出された。日本語を母語とする大学生及び大学院生がこれらの英文を読解し,2文目の注視継続時間及び1文目への読み戻り頻度が計測された。これらの視線計測指標を統計的に分析した結果,因果的関連は2文目の注視時間及び1文目への読み戻り頻度の両方に影響を与えており,因果的な関連が高いほど注視時間が短くなり,1文目への読み戻りが少なくなる傾向にあった。一方,意味的関連は2文目の注視時間にのみ影響を与えており,かつ因果的な関連が高いときにのみその影響が見られた。 これらの結果から,自然な読解状況下においても文どうしの関連の強さが学習者の英文読解プロセスに影響を与えること,そして,意味的な関連よりも因果的な関連のほうがその影響が顕著であることが示された。これらの知見は,英語学習者の認知プロセス,英文読解指導,教材開発へと示唆を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請時の通り,研究期間1年目において2文1組の英文の読解を検証する研究を行い,その成果を関連学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度において2文1組の英文の読解を検証したため,今後はより長い英文を用いた検証を行う予定である。しかしながら,新型コロナウイルス感染症の拡大により,対面での視線計測実験の実施が難しい場合は,既存のデータや公開されている視線計測データなどを用いた分析を行うことを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大により,使用を計画していた旅費や人件費が未使用となったため。感染拡大状況に応じて,旅費等に再度配分していく。
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