研究課題/領域番号 |
20K00829
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
藤井 数馬 長岡技術科学大学, 工学研究科, 准教授 (50413779)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多読 / 語彙サイズ / 電子図書 / コーパス |
研究実績の概要 |
本研究2年目に当たる令和3年度は、新型コロナ感染症対策として勤務先の授業はオンライン授業やハイブリッド授業で行われることになった。コロナ禍となった令和2年度にオンライン授業でも多読できるように整備した電子図書(Maruzen eBook Library)も利用しながら、令和3年度の授業では多読を採り入れ、学期の最初と最後に語彙サイズテストを実施した。学生には学期で5万語以上を読むように声をかけ、多読が語彙力をはじめとした英語力向上にどのようにつながるのかを説明することで内的動機づけを高めるようにした。学期の最後には英語の読み方などについて質問紙調査を行い、語彙サイズの伸長と、多読量や、英語の読み方の関係について分析を進める準備を整えた。 また、新型コロナ感染症の影響で多読指導ができない状況となった令和2年度に、予定を変更して行った研究として、多読図書のコーパス作成と分析がある。これは、どのような図書を使って、どの程度の多読を行えば、どのレベルの語彙に対して、どの程度、付随的語彙学習が実現するかに関して、コーパスを使って分析することを目的としたものである。令和3年度には、この研究成果の一部として2編の論文が学術雑誌に掲載された。このコーパスは更なる分析が可能で、令和4年度に研究を深める準備を整えた。 研究の最終年度となる令和4年度では、令和3年度に実施した語彙サイズテストの結果分析および、コーパス分析を行う。同時に、令和3年度とは異なり、多読指導と明示的語彙指導を組み合わせて行うことで、語彙サイズ伸長につながる多読指導法を探究する。 コロナ禍により令和2年度の研究計画を大幅に変更せざるをえなかった影響を受けて、計画より1年遅れている。本研究の目的を確実に遂行することを第一に考え、研究期間の延長も視野に入れながら進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究計画よりも遅れている理由は、研究1年目に新型コロナ感染症対策として授業がすべてオンラインで行われたことによる。学生は極力大学に来ないように指示され、当時は電子図書で多読ができる環境が整っておらず、紙媒体で整備されていた多読図書を利用できず、多読指導を行うことが不可能となった。本研究は、授業内外での多読指導を半期間行う中で、語彙サイズや語彙力の変化を分析するものであり、1年間多読指導ができなかった分の進行が計画よりも遅れている。 しかし、令和2年度には研究計画を大幅に、且つ、本研究遂行に寄与するように柔軟に変更し、電子図書で多読が行える環境を整備しするとともに、主に多読の初期段階に用いる多読図書をコーパス化することができた。この研究計画の変更により、オンライン授業であっても多読指導ができるようになり、多読が付随的語彙習得に与える影響をコーパスから分析することができるようになった。実際、ハイブリッド授業形態となった令和3年度において多読を採り入れることができ、語彙サイズテストも実施することができたのは、この電子図書整備に依拠するところである。また、コーパス分析などを進め、その研究成果の一部として、2編の学術論文を出版した。 実証研究の計画が1年遅れであることは続いているが、令和4年度では、令和3年度に実施した語彙サイズテストの結果分析を行うとともに、令和3年度とは異なる多読指導を採り入れ、その結果として語彙サイズにどのような影響が見られるのかを分析する。多読を通して語彙サイズを伸ばす要因と指導提言という目的を遂行できるよう、研究期間の延長も視野に入れながら進める。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の授業では、教室での多面授業とオンライン授業が混在しているが、どちらの授業形態であっても多読指導を採り入れる。その上で、令和3年度に行った指導とは異なる多読指導を採り入れながら、語彙サイズテストを学期の最初と最後に行う。その上で、語彙サイズの伸長度を、多読量、元々の英語力、英語の読み方、多読指導方法などの観点から多角的に比較分析する。また、紙媒体と電子媒体の2つのメディアでの多読が並行している状況を利用し、学習者が紙媒体の多読図書を中心で読んだか、電子図書を中心で読んだかで、英語の読み方にどのような差が生じたのかも分析する。さらに、多読図書のコーパスをさらに充実したものにして、どういった語を附随的に習得できる可能性があるのかについて、言語データの観点からも分析し、学会での口頭発表、学術論文での発表を通して公表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度は、出張に行く予定だった国内学会および国際学会がすべてオンライン開催となったため、出張旅費として計上していた予算を使う必要がなくなり、余剰が生じた。多読図書については使用計画から大幅な変更なく使用し、学生のための多読環境を充実させることができた。 余った研究費は令和4年度に繰り越し、コロナ禍でも安定して多読指導が行える環境をさらに整備していく。また、本研究成果を国際的な場でも公表するための校正費用や出版費用にしていくことで、本研究を教育改善につなぐ意義あるものにするために有効に使用する。
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