研究課題/領域番号 |
20K00836
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
立松 大祐 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (10756828)
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研究分担者 |
池野 修 愛媛大学, 教育学部, 教授 (70294775)
多良 静也 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 教授 (00294819)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リテラチャー・サークル / 話合い活動の教授法 / 中学生の談話分析 / アクティブ・ラーニング |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、(1)LCの話合い活動は中学生の英語使用にどのような影響しているか、英語使用の実態と課題を把握し、LC指導方法の改善を図ること、(2)話合い活動における英語使用の複数年調査から、LC活動における目標となる英語使用のベンチマークを各学年で設定すること、(3)英語圏のリテラシー教育の取組を日本の英語教育に応用し、技能統合的で対話的な言語活動が中心になる教授法を開発することである。新型コロナウイルスの感染状況により、研究協力校ではペア活動やグループ活動が制限される事態もあり、計画したとおりには進まなかった部分もあるが、中学校の1年生から3年生でLCの話合い活動を実施することができた。 特に、目的(1)について、中学3年生1グループの4回にわたる活動中の発話数などを分析し、中学3年生中旬における生徒4人での15分間の対話では、平均すると約913語の発話数、約107文の英語が使用されることが分かった。また、談話分析の結果として、生徒は教科書題材の英文から、自分の知識や経験、社会の出来事と関連付けて自分の考えを英語で表現していることが観察できているので、LCは主体的・対話的で深い学びを実現できる言語活動であることを英語授業研究学会誌に発表した。目的(2)については、学年末に中学2年生の話合いデータをとったばかりであり、その分析と報告を来年度に行い、中学2年生での英語使用ベンチマークを報告する予定である。中学1年生については、学年末にLCを1回行うことができたが、ベンチマークを設定するデータとしては少ないため、来年度の課題としたい。目的(3)について、話し合いを評価するためのツールを開発し、協力校で使用を開始して指導法の改善に努めた。また、学習者による質問づくりを取り入れた言語活動の提案と実践例について論文化し、大学教育実践ジャーナルに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は、LCの話合い活動における英語使用実態と指導の課題を明らかにし、地域の学校に指導方法を普及することである。3か年の計画を立てているが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、協力校での話合い活動やペア活動に制限がかかるなどしたため、実践ができない状態もあったが、中学3年生については談話分析を行うためのデータを取ることができ、その分析結果の一部は論文化した。しかしながら、中学2年生については、当初の計画よりもLCの実施が遅くなり、学年末まで実践を続けていたこともあり、データの収集はできたが分析にまで至っていない。今後、3年生と同様にのターンテーキング数・語・句・文発話数などの分析を読みの役割ごとに行い、複数年度の比較調査を行う。中学校1年生においても新型コロナウイルス感染拡大の影響は大きく、市内の協力校において2回しか実践ができなかった。これらにより、LCの話合い活動における英語使用実態と指導の課題を明らかにし、地域の学校に指導方法を普及する研究の目的に対して少々遅れが出ている。また、文献研究だけでは分からないことについて、海外での実践を観察する計画をしているが、今年度も海外渡航はできなかったため、新しい指導法の開発の面においてもやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は新型コロナウイルス感染についての行動制限が緩和されつつある状況であり、協力校においても計画的にLCを取り入れることが可能である。全学年でLCを実現できるよう指導方法を工夫しつつ、学年ごとの英語使用ベンチマーク設定ができるよう努力する。特に、前年度2年生と今年度3年生の話合い活動データから英語使用力の経年変化を調査する。また、英語コミュニケーション能力に制限がある中学校1年生でも実践できる、LCの手法を活用した統合的で対話的な言語活動の指導のシステムと授業モデルと対話状況を生徒が確認できる自己評価ツールを開発する。 新学習指導要領では、「読んだことについて話したり書いたりすること」など対話的な学びのための指導は多くの学校で求められる。英語圏のリテラシー教育の研究(Socratic Seminar、Philosophy for Children、Quality Talkなど)を行い、中学校英語教育に取り入れることができる話合い活動の改善に資する指導法を開発する。さらに、海外渡航が認められる状況になったため、これまでも授業観察や資料集を行ってきている学校や上記のリテラシー指導を実践している学校を訪問し、意見交換及び実践や研究を進めるための方策を学ぶ。さらに、学術交流協定校のカリフォルニア州立大学サクラメント校等での学会発表と資料収集を予定したい。 研究期間を通して、LCは英語力向上のどの技能に貢献するか、生徒は対話を通して協同的に学んでいるかを長期的に研究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、多くの学会がオンラインでの開催になったこと、他府県や外国に調査に行くことができない状況であったことによって旅費の支出が計画当初の予定どおりに執行できないことが、次年度使用額が生じる理由である。、
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