研究課題/領域番号 |
20K00852
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研究機関 | 天理大学 |
研究代表者 |
吉田 智佳 天理大学, 国際学部, 准教授 (00388886)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前置詞 / 第二言語習得 / 前置詞の習得に影響を与える要因 / 母語の影響 / 前置詞と補部名詞句の照合 / 動詞と前置詞の照合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は2つある。第1の目的は日本語を母語とする英語学習者(以下、JLEs)を対象に前置詞の習得に影響を与える要因を解明することである。第2の目的は前置詞の習得に影響を与える要因を考慮した指導法を考案し、その指導の効果を検証することである。 2021年度は前年度に引き続き、前置詞の習得に影響を与える要因の一つと言われている「母語(日本語)の影響」に焦点を絞って調査した。今回はそれぞれの前置詞にどのような日本語訳を対応させているかを調査した。その結果、前置詞と前置詞の日本語訳との対応関係が習得に影響を与えているわけではないことが示唆された(吉田、2021)。 むしろ、JLEsの場合には、前置詞の補部名詞句(=目的語)の名詞が持つ概念について、母語(日本語)と学習言語(英語)との間でズレが生じているために前置詞を正しく選択できないという傾向が観察された。つまり、前置詞を正しく選択できない原因の一つが前置詞と日本語の助詞、あるいは特定の日本語の表現形式との対応関係にあるのではなく、前置詞そのものの意味が理解できていないことに加え、前置詞とその前後の要素(=前置詞の手前の動詞と前置詞の補部名詞句)との照合ができないことにあることが示唆された。特に、類似した意味を持つ前置詞の場合、それぞれの前置詞の意味の違いが分かっていないために前置詞とその前後の要素とを正しく照合できない可能性を示唆する結果が得られた(吉田(投稿中))。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
オンライン授業時には予定した調査が実施できなかったため、やや遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
先行研究の中には第二言語学習者は英語の前置詞が持つ「概念」とそれに対応する学習者の母語にある前置詞や後置詞(日本語の場合は助詞)、あるいは特定の表現形式が持つ概念を転移させていると主張する研究があるが、その「概念」が何かについては明確にされていない。さらに、母語の前置詞や後置詞が持つ概念の「何が」「どのように」転移するのかが明示されていない。特に、日本語のように前置詞を持たない言語の母語話者が母語の「何を」前置詞の「何に」「どのように」転移させるのか曖昧であるように思われる。 したがって、まずは「前置詞の概念とは何か」を明らかにする必要がある。次に、日本語のように母語に前置詞を持たない言語の母語話者が母語の「何を」前置詞の「何に」転移させるのか、先行研究で言われている「母語の転移」そのものを再検討する必要がある。 本研究では母語に前置詞を持たない日本語母語とする英語学習者(以下、JLEs)の場合、母語の転移は母語(日本語)と学習言語(英語)の名詞や動詞が持つ概念間で起こると想定しているため、「英語の前置詞の概念を習得する初期状態がどのような状態であるか」、「その初期状態からどのように習得していくのか」、「前置詞がその補部名詞句(=目的語)をどのように選択するのか」、「動詞が前置詞をどのように選択するのか」などのメカニズムを明らかにする必要があると考える。 この点を明らかにすることにより、本研究の第二の目標である、JLEsが前置詞を正しく選択できるようになるための指導法の考案に着手できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請当初に予定していた学会、および研修会等がすべてオンラインで開催されたため、出張費を使用することがなく、次年度使用額に繰り越された。翌年度は対面で開催される学会等があれば、可能な限り参加・発表し、他の研究者との交流を深めたい。
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