研究実績の概要 |
本研究の目的は日本語を母語とする英語学習者(JLEs)にとって、①前置詞の何が難しいのかを調査し、②その難しさを生み出す要因に基づいた指導法を考案し、③その指導法の効果検証を行うことである。 JLEsにとって難しいのは類似した意味を持つ前置詞の使い分けである。2022年度に前置詞とその前後の要素の関係性に着目し、「前置詞は値を持った意味素性の集合体である」と仮定し、「前置詞とその前後の要素がそれぞれに持つ意味素性が照合される」という素性照合のメカニズムを提案した。この素性照合のメカニズムはChomsky (1995)のMerge(併合)を応用したものである。「JLEsが類似した意味を持つ前置詞の選択を誤るのは、前置詞の意味素性が正しく設定されていないか、あるいは前置詞の手前(あるいは後ろ)の要素の中に前置詞が持つ意味素性と一致する要素を見出せないからである」という仮説を立て、この仮説に基づいて前置詞の難易度順序や前置詞の選択における補部名詞句の影響について調査を行った。 2023年度は上記の仮説の「前置詞が持つ意味素性」を「前置詞の選択制限」と捉え直し、「JLEsが類似した意味を持つ前置詞の選択を誤るのは、前置詞の選択制限が正しく設定されていないか、あるいは前置詞の手前(あるいは後ろ)の要素の中に前置詞の選択制限と一致する要素を見出せないからである」と修正した。この仮説の下で時を表す名詞句と共起する前置詞(at, in, on)をJLEsがどの程度正しく使い分けができるかを調査し、口頭発表を行った。さらに、時を表す名詞句と共起する前置詞(at, in, on)の指導の効果についてもデータを収集させていただいた。この結果は2024年度に発表予定である。
|