研究実績の概要 |
「ランゲージング」(Swain, 2006)とは外国語学習者が疑問や問題に感じたことや自らの言語使用を振り返る際に、それらについて話す、または、書いて理解を深める学習プロセスで、口頭・筆記ともに言語学習を促進することが報告されている。しかし、これまではランゲージングをいかに実際の授業に取り入れ、長期的に活用するかはあまり検証されてこなかった。そこで、本研究1・2年目は筆記ランゲージングの長期的な学習効果解明を目指し、10週間にわたり教室実践への応用を試みた。1年目はオンライン、2年目は対面授業の前後にテストを実施して、授業に取り入れたランゲージングの効果を調べたところ、両年とも全ての週で伸びがあったが、筆記ランゲージングを行った週と行わない週の伸長度には違いがほとんど見られなかった。また、筆記ランゲージングを行った週ごとの伸びの間にも差が見られた。このことは筆記ランゲージングが学びを促進するものの、文法項目の難易度によって効果が変化することを示唆している。
本研究3年目には、ランゲージングを行う対象によってその学習効果に違いがあるのかを、事前テスト・処遇・事後テストのパラダイムを用いて検証し、筆記ランゲージングの対象とその学習促進効果の関係解明を試みた。23名の参加者に、冠詞の用法を自分に(自己群)、または、同級生に(他者群)書いて説明するよう求めた。英作文と多肢選択の2種類で構成された事前・事後テストの結果を分析したところ、英作文の事後テストで他者群が自己群よりも有意に得点を伸ばしていることが判明した。研究延長による最終年度には、3年目と同様のデザインで参加者を43人に増やして追試を行ったところ、両群に差は見られなかった。これらの結果は、ランゲージングをする対象が学習効果に影響を及ぼし得ることを示唆するが、より効果的な教師の指示解明のため今後も更なる検証が必要である。
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