研究課題/領域番号 |
20K00868
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研究機関 | 日本体育大学 |
研究代表者 |
東野 裕子 日本体育大学, 児童スポーツ教育学部, 准教授 (20781686)
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研究分担者 |
高島 英幸 東京外国語大学, その他部局等, 名誉教授 (40128434)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 主体的・対話的で深い学び / 英語絵本 / 段階別絵本 / プロジェクト / 検定教科書 / TBLT |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,全教科・領域に共通の「主体的・対話的で深い学び」を小学校外国語教育の観点から言語活動を通して可視化することである。 まず,2020年度は,理論的な基盤であるEllis(2020)のアジアの小学校英語教育に関する論文を日本における英語教育に関わるネイティブ・スピーカーと精読した。この論考の内容を,2年目から開始する調査協力校の日本人教員と理論的背景を共有できるように概要を和訳し,配布準備を整えた。 次に,英語絵本や段階絵本を,第5・6学年の検定教科書を使用したシラバスに組み込むための教科書分析を行った。分析の観点は,教科書7社が,①課題解決型(プロジェクト型)の授業構成・内容となっているか,②各単元で使用する英語表現と共に最終的なゴールや言語活動(例えば,「自己紹介をしよう」)の有無の比較調査である。結果,目次(単元名)がプロジェクト的になっているものは3社に留まり,言語材料,練習,言語活動については,単元の学習活動としての練習や言語活動には関連性が薄く,活動内容が単発的で連続性がなく,児童の発達段階や興味に合った題材や活動が少なく,単元内の進行の難易度に差があり,学習困難が生じる可能性が危惧された。 このことから,英語絵本や段階的絵本を国内書店などから取り寄せ,教科書における活動間のギャップを補う作業に取り掛かった。具体的には,語彙や英文の難易度,内容などの観点に加え,検定教科書の各単元の言語材料に合った英語絵本や段階別絵本を「英語絵本基準表」(東野,2020)を参考に使用する絵本などを選定し,単元の中の練習や最終の言語活動に活用できるようにリライトを開始した。 現在,精選した英語絵本や段階別絵本を活用した練習や言語活動が決定した単元においては,単元の流れ(授業の流れ)などを考え,教材などの準備や,授業アンケートや振り返りシートの作成など実証授業に備えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は,初年度(2020年度)であるため,1年間をかけて,基礎研究(理論研究)及び教材開発のための検定教科書,英語絵本分析などを行った。理論的な背景を調査協力校の教員と共有するために,論考の概要を作成し基礎資料の準備を整えた。 教材作成のために,7社の第5・6学年用の検定教科書分析を行い,協力校の教員との共同の授業作りの基礎資料を準備した。とりわけ,英語表現,単元内での練習,言語活動などを分析し,協力校の教員のさまざまな活動の提案にスムーズな理解がなされるように,追加の基礎資料として,充実した言語活動,絵本や段階的絵本導入の必要性などの理解を深めるためのマニュアルを作成した。 コロナ禍であることから,実証実験を行う学校の選定に困難が生じているが,単元の詳細や授業中に使用する教材などの準備を整えている。これらを使用して,来年度(2021年度)には実証授業を実施する予定である。また,これまでの結果を2021年8月に学会発表する予定である。 以上のことから,ほぼ計画通りに進捗しており,概ね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度(2年目)は,2021年度(1年目)の基礎研究,検定教科書分析,英語絵本,段階別絵本を活用した教材開発を踏まえ,① リライト教材を活用した言語活動の構想,② 授業準備(単元計画,各時間の詳細の計画,指導案・指導細案の作成,使用教材の作成),③ 語彙調査・質問紙の作成,④ 言語活動を中心とした授業実施,⑤ 語彙調査・意欲調査の実施,⑥ データ収集・分析を行う。また,初年度(2021年度)の結果を国内学会(オンライン)で発表する。 3年目の最終年度(2022年度)は,2021年度の結果より,① 言語活動の修正,② 授業実施,③ 語彙調査の実施,⑧ データ分析,⑨ 研究のまとめ,⑩ 国際学会での発表を行う。 調査対象の小学校については授業実施の依頼済みである。実施に当たり,各教科等と関連する内容,また,絵による場面で英語が理解できる絵本の特徴と課題解決型の授業とすることで,絵本活用と課題解決型の授業に相乗効果による結果が出ると考える。 課題解決型(プロジェクト型)の授業により,各教科等で学んだ「主体的・対話的で深い学び」を実現する「学習方略」が,英語によるコミュニケーションを可能とする技能教科である外国語科に転移することを実証する。データなど個人情報は適切に管理し,個人が特定されない形で分析,結果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍であったため,感染拡大予防を考え,教材収集,研究分担者及び研究協力者との会議,学会などオンラインで行なったため,教材収集のための旅費,及び,国内学会参加旅費,協力校との会議のための旅費などが必要なかった。 また,絵本教材及び,検定教科書分析の結果入力などのために大学生のアルバイト代を予定していたが,来学して作業することが不可能であったため,研究分担者と研究協力者に依頼して行ったため,謝金が必要なかった。
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