研究課題/領域番号 |
20K00875
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
植木 美千子 関西大学, 外国語学部, 准教授 (30737284)
|
研究分担者 |
竹内 理 関西大学, 外国語学部, 教授 (40206941)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | FLCAS / 外国語不安 / 動的等価 / 文化的背景 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、第二言語 (L2) 不安の概念を文化圏別に調べることを通して、「不安に対する概念理解の齟齬が、質問紙等の測定用具の妥当性に影響を与え、その結果、様々なL2 不安研究の知見の食い違いを生み出している」という仮説を検証することにある。本研究の成果は、L2不安の概念再構築と再定義、および新たな質問紙の開発と再現研究の促進につながる。 2020年度は、Web版質問紙を用いて、文化圏別にL2不安から想起される感情・イメージの調査を行った。イメージ調査を行う過程で、「動的等価(原文読者と翻訳読者が、同じような印象を持つことができる訳出を目指すこと)」という概念を取り入れ、動的等価という観点から感情・イメージ調査を行ない、その結果を質問紙の開発にも反映させた。現在、L2不安を図る質問紙としてHorwitz, et al. (1986)が作成した、FLCASが世界中で広く用いられている。また、日本人を対象としてFLCASを実施する際、Yashima et al. (2009)が翻訳した日本語版が広く使用されているが、これは動的等価まで考慮して作成した翻訳版ではない。そこで、2020年度は、翻訳版質問紙の作成にあたり、日英バイリンガル話者(全員通訳翻訳の実務家、研究者)と共に動的等価を検討しながら、翻訳を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナウィルスの影響で、対面授業からオンラインに切り替わり、質問紙実施が予定通りに進まず、秋からの実施となってしまい、半年ほど計画から遅れてしまった。しかし、質問紙作成に向けたインタビューやパイロットスタディは実施することができたので、2年目に入りようやく遅れを取り戻しつつある。
|
今後の研究の推進方策 |
翻訳版質問紙の作成にあたり、日英バイリンガル話者(全員通訳翻訳の実務家、研究者)と共に動的等価を検討しながら、翻訳を行い、動的等価を意識した質問紙FLCAS作成(日本語版)を試みる。またこれらの試みを他の言語にも応用し、韓国語や中国語版のFLCASなどの作成を考えている。またHorwitz, et al. (1986)が作成したFLCASの原本は、外国語の授業を受けていて、授業内で行われる説明や、教師―学生間のやり取りもすべて外国語で行われるという環境に学習者がおかれている、という教室環境下での不安を測る質問紙であるため、日本のように日本語と外国語(英語)の両言語が使われる環境下では、使用条件に一致しない。そのため、今後はこのような環境でのL2不安を測る質問紙開発も視野に入れて研究活動を行なっていく ことを考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染拡大のため、参加予定をしていた学会出張などが全てキャンセルになったため、予定していた旅費を執行できなかった。また同じ理由で、2020年度の前期は急なオンライン授業の実施などで、以前から依頼していた質問紙調査の実施時期にバラツキが出たり、質問紙調査の中止などもあったため、当初は夏にアルバイトを雇い、データ入力や分析を依頼予定だったが、予定通りには進まず、人件費・謝礼金の執行も予定通りにはできなかった。2021年度は、日英バイリンガル研究者の助言と協力を依頼し(人件費・謝金)、L2不安を測る日本語版質問紙 FLCASの完成に向けて2020年度の未使用額をその経費に充当させる。またその方法を他言語(中国語や韓国語)版の作成にも応用する。その際に、他言語に精通する研究者や実務翻訳家への人件費・謝金が必要となる。またもしコロナの感染状況が落ち着いたら、動的等性を専門とする翻訳の研究者に研究結果の助言をもらいに東京の研究室を複数回訪れる予定である(旅費)。さらに、海外の渡航が可能になれば国際学会にも参加をする(旅費)。研究結果の公表を英語で行う場合は英文校正費が必要となる(人件費・謝金)。また論文管理のためipadを購入し、学生アルバイトに研究関連論文の収集と整理、そして論文の電子化の作業などを依頼し、ipad内で全ての関連論文などを管理できるようにする(人件費・謝金、物品費)
|