研究課題/領域番号 |
20K00876
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
長谷川 由美 近畿大学, 生物理工学部, 准教授 (40585220)
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研究分担者 |
田中 省作 立命館大学, 文学部, 教授 (00325549)
本田 久平 大分工業高等専門学校, 電気電子工学科, 教授 (40342589)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 手話 / 指さし / 映像 / コーパス / 教材開発 |
研究実績の概要 |
本研究初年度は、DVDを中心とした手話学習教材と、聴覚障がい者、手話通訳有資格者、および長期手話学習者による自然に近い手話会話や語りの中で現れる指さしについての研究を行う予定であった。しかしながら、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、手話学習教材の分析にとどまった。 具体的に分析対象とした学習書は『DVDで学ぶ手話の本 全国手話検定試験5級(4級、3級、2級、準1級1級)対応』(社会福祉法人全国手話研修センター編集、中央法規出版)である。このシリーズの本を選んだ理由は、①レベル分け(級分け)が明確であること、②ゆびさしが出現している箇所が明確であること、③全国手話検定試験が特に手話初学者向けの試験であること、である。受験する試験の各級において、どのような指さしを身につけていることが期待されているのか、複数の機能を持つ指さしの学習順序が見いだされるのではないかと考えた。 各級の本には、文を単語ユニットに区切った表記がされており、全体のユニットの約2~8%が指さしであった。5級(最も初心者向けの級)では2%、準1級1級(最上級)では8%であり、上級の方が指さしの使用率は高かった。また、指さしの機能は、初級者向けの級では、文末に指さしを使って主語を明確にする機能が多く使われ、上級では、文頭や文中で既出の文脈を指し示す指さしが多くみられた。初級の場合は一文一文が短いため、文脈を指し示すような指さしを使う機会が少ないことに起因していると考えられる。 このように、レベル別に構成された教材を見ることにより、指さしの学習順序を考慮した学習方法や教材内容の選定が可能になると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度においては、新型コロナウイルス感染拡大が止まらず、手話を日常使用している聴覚障がい者や、手話通訳者/手話通訳士、および手話をある程度理解している聴者に実際に会っての手話データの収集は行うことができなかった。活動を休止せざるをえない手話サークルも多く、そのような状況の中で、データ収集のために集まってもらうことは困難であった。残念ながら、現時点でも、その状況はあまり変わっていないのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には、令和2年度にできなかった「手話映像コーパスの手指形状による検索機能を使った検索検証」を始めるために、実際の手話での会話で使われている指さしのデータ収集および、それらの分析に取り掛かる。 また、初年度に行った『DVDで学ぶ手話の本 全国手話検定試験5級(4級、3級、2級、準1級・1級)対応』に出現している指さしの出現箇所とその機能に関する調査結果を手話もしくは言語関連の学会、または大学の紀要で発表する。さらに、調査範囲を広げるためにも、他の手話学習教材を検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度は新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、学会出張や研究者が集まる機会が最小限に抑えられた。また、手話話者に実際に集まってもらって、データ収集を予定していたが、こちらも控えることとなったために、計上していた謝礼金などを使うこともなかった。 令和3年度も、当面の間、感染状況に注意しながら、研究活動を進めることになりそうである。昨年度同様、現時点においては、出張の類は控えざるを得ない。また、活動を休止している手話サークルや手話関係団体もある。今後は、新型コロナウイルス感染拡大状況を見ながら、自然な手話会話のデータ収集を行う予定である。
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