研究課題/領域番号 |
20K00877
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研究機関 | 大阪成蹊大学 |
研究代表者 |
伊藤 由紀子 大阪成蹊大学, 経営学部, 准教授 (20804826)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | CLIL / 伝統工芸 / 音声指導 / 文字指導 / 教員研修プログラム / 小中連携 / 教科横断型 |
研究実績の概要 |
本研究では、外国語指導において日本の伝統文化・伝統工芸を扱うCLIL(Content and Language Integrated Learning:内容言語統合型学習)授業を行い、自国の文化を英語で伝えたいという児童・生徒の積極的な態度の育成をめざしている。近年はグローバル化が進んでいるが、外国からの文化や情報を取り入れるとともに日本の良さを英語で発信していく力を持つこともまたグローバル教育のひとつである。学習指導要領では、「教科等間の相互の関連」の重要性が示されており、他教科の内容を英語で教えるCLILを通してその学びを深めることの必要性を感じている。本研究は、新学習指導要領の育成すべき資質・能力の三つの柱である「学びに向かう力・人間性等」「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」にも対応している。 しかし外国語の音声を操作する力を獲得するには長い時間が必要である。しかも外国語教育の初期段階は非常に重要である。英語の音声から文字への移行期につまずきを感じて英語嫌いになる児童・生徒を一人でも少なくするため、音声と文字のスモールステップによる文字指導の教材を開発して苦手意識を持つ生徒の増加を防ぎたい。そのために、児童・生徒が英語の文字を学ぶ際に教員が適切な指導ができるよう、文字指導の方法と教材の活用法を中心に小学校で往還型の教員研修プログラムを構築しサポートを行う。それにより自信を持って英語指導に臨める教員養成に貢献することも目的としている。 現行教科書の中にはCLILの視点が取り入れられているが、現場ではまだ新しい英語指導に対する戸惑いが見られる。その点からも本研究は教員に寄り添い、自信を持って指導できる教員養成を目指すという大きな意義があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に関して、おおむね順調に進展している。2022年度も引き続き、新型コロナウィルス感染症の影響で、当初の研究予定から変更を余儀なくされることとなったが、これまでより大幅に緩和されたため、2年間中止していた伝統文化・伝統工芸の調査を実施することができた。秋田県・岩手県および鹿児島県・宮崎県を訪れ、実際に文化に触れ、体験することを通して伝統文化・伝統工芸を深く知ることができた。さらに伝統工芸士に聞き取り調査を実施することができた。今後、それらの調査結果をまとめ、発表、執筆活動を進めていく予定である。 CLIL授業実践に関しては、複数の小中学校で、絵ろうそくやマジョリカタイル作成など、様々な伝統工芸を体験する英語授業を行うことができた。データ処理も進んでおり、論文に関しても執筆中である。さらに、今年度はベトナム(ハノイ市)において、日本語CLILで絵ろうそくを作成体験するワークショップを行うことができた。ベトナムではまだCLIL実践を行っている日本語教員は多くはないが、言語を学ぶ際には、スキルの習得のみではなく、文化を学ぶことも同時に視点に取り入れていくことが大切であると再確認することができた。 今年度は予定していた、いくつかの研究を実施することが可能であった。しかし、当初スペインのマジョリカタイルの調査に訪れる予定であったが、それは実施できなかった。他にも授業実践、教員研修で実施できなかったものもあり、そのため引き続き研究を継続する。新型コロナウィルスの影響も限定的になってきているためスムーズに研究が進むと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、新型コロナウィルス感染症の影響はあると思われるが、今年度は伝統工芸に実際に取り組んでいる日本各地・およびスペインの調査を実施する予定である。スペインのタイル調査は夏期に実施したいと考えている。スペインでは、セビリアや、グラナダなどアンダルシア地方に残る、アルハンブラ宮殿をはじめとする古い宮殿のタイル、ポルトガルの影響を受けたアズレージョタイル等も調査し、伝統工芸士にインタビューをする予定である。また、実際にタイル工房で製作体験を行う。 授業実践に関しては、CLIL授業を行っていくと同時に、音声と文字に焦点を当てた教材作りや授業実践も引き続き行う。特に、絵本を使った音声と文字の指導に関して、教材作りに力をいれていきたい。そして、それらの教材を複数の小学校で実践し、データ処理を行うつもりである。 本年度は最終年度となるため、これまでの研究成果をまとめて、国内外の学会発表および論文発表を行う予定である。さらに、小、中学校の研究会等における教材の配布、教員への指導など、特に若手の教員が自信を持って指導できるよう、サポートを続けていきたい。 さらに、これまでに伝統文化・伝統工芸について積み重ねてきた実践や、作成した多くの教材について、授業方法や生徒への発問の仕方、プレゼンテーション資料などをわかりやすく記録し、「日本の伝統文化・伝統工芸CLIL教材集」を作成したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに新型コロナウィルス感染症の影響で実施できなかった事項が複数ある。国内および海外の伝統文化・伝統工芸の調査、伝統工芸士の聞き取り、小・中学校でのCLIL授業実践のための教材見本や教材費等の購入ができなかったため、次年度使用額が生じた。研究の延長を行い、翌年度分として助成金を請求する。 今年度は最終年度となり、新型コロナウィルスの影響も限定的になってきているので、スペインへのマジョリカタイル調査および伝統工芸士への聞き取りを実施する予定である。ただ、近年の航空機燃料代の高騰と円安の影響等により、当初の予定よりも高額になる可能性がある。 加えて、CLIL授業実践の回数も増える予定であるため、教材作成、授業実践および教員研修にかかる費用も予定している。それらは授業のための教材、交通費、通信費、文房具等が中心である。研究会に参加するための費用や、論文掲載費用も計上している。
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