研究課題/領域番号 |
20K00893
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研究機関 | 桜美林大学 |
研究代表者 |
熊澤 雅子 桜美林大学, グローバル・コミュニケーション学群, 准教授 (20386478)
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研究分担者 |
BREWSTER Damon 桜美林大学, グローバル・コミュニケーション学群, 准教授 (60458726)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 教育政策 / 言語政策 / 外国語教育 / 高等教育 / EMI |
研究実績の概要 |
本研究は、英語を媒介用語とした(English as a medium of instruction、以下「EMI」と表記)授業を行う大学を、質的研究手法を用い長期的に調査することで、異なるステークホルダーが認識する利点と弊害にどのような共通点と相違があるかを調査することを目的としている。日本の大学に加え、比較としてEMIの導入の歴史や状況、英語の社会的役割の異なるスウェーデンの大学からデータを収集し、EMIにおける日本固有の問題点を考察する。現在までの2年間は新コロナウイルス感染症の影響から、授業観察等やスウェーデンの大学でのデータ収集は実施を見送り、オンラインでのデータ収集及び研究会を実施している。 初年度の2020年度は、文献研究と同時にEMIの授業を履修した日本の大学生計13名にオンラインインタビューを行い、そのうち年度前半に収集したデータを分析した。結果、言語政策の導入過程でマクロレベルの政策とミクロレベルの実践に齟齬があり、受講生に対するサポートの必要性が示唆された。 2021年度は、前年度後半に収集したデータの分析を進め、全データの文字起こしを完了し、そのデータを、EMIにおける「英語」の位置付けという問題に焦点を絞って分析し、研究論文の執筆を開始した。今までの分析の結果、EMIを履修した学生の中でも「英語」のとらえ方には個人差があるが、共通するのは国際語としての英語の有用性で、ただしその有用性を自己のキャリア形成の手段として認識する学生がいる一方、キャリアとは別の「自己実現」のツールとして考える学生もいることが示された。また前年度の研究成果をもとにEMIの利点とリスクに関する研究発表を国際学会で行った。年度末には次の研究対象である語学教員へのデータ収集を開始し、年度末に1名のインタビューを行った。さらにスウェーデンの研究グループとのオンライン研究会を2度開催し、収集するデータのすり合わせ、分析状況などの情報交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度当初計画通り進めた部分としては、オンラインのデータ収集を中心にした研究活動、スウェーデンの研究チームとの研究会開催などである。ただし、予定していた語学教員へのデータ収集は学外の研究対象者1名には行うことができたが、それ以外の学内の研究対象者に対しては、学内の謝金支払いのルール変更を待って2022年度開始直後に行うこととしたため、2021年度には実施できなかった。このデータ収集については、2022年4月に実施し、本文書作成時点では終了している。また現地に赴いてのデータ収集や学会出張は、新型コロナウィルス感染症流行の影響が引き続きあったため見送り、データ収集も限られた範囲のもので研究を行わざるを得ず、学会参加もオンラインのもののみにどどまった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、上述した語学教員へのデータ収集を年度当初に行いその分析を進めると共に、2021年度に執筆を開始したEMIを履修している学生を対象とした論文の完成を急ぐ予定である。また、新型コロナウィルス流行関連の規制緩和が期待されつつあり実際にフィールドに赴く研究活動を徐々に再開できる見込みであることから、スウェーデンの大学でEMI研究を行っている研究者グループと実際に訪問しあい、フィールドワークを行うとともに研究に関する情報交換・共同作業を行う予定である。スウェーデンチームは今年の前半に来日を計画しており、日本からは年度後半の渡航規制や入国規制の状況を見て判断する予定である。また年度後半には、EMIで専門科目を教える教員へのデータ収集を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の影響で予定していた学会参加を全てオンラインに切り替えたことが差額が生じた主な理由である。2022年度は規制緩和の兆しがあり、実際の学会参加を目的とした旅行や、スウェーデンへのフィールドワークを実施できる見込みが高いが、引き続き状況を慎重に見極めながら研究活動を行う予定である。
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