研究課題/領域番号 |
20K00901
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩下 智彦 早稲田大学, 日本語教育研究センター, その他(招聘研究員) (00803397)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 日本語教育 / 自然言語処理 / 読解 / 言語テスト / 単語ベクトル / 難易度予測 |
研究実績の概要 |
2021年度の研究実績として以下の研究成果を得た。 1)日本語学習者を対象とした読解テストの文章に対して、日本語教育の専門家8名よる評定を行い、その結果を分析した。評定項目は、日本語学習者の書いた作文評価および自然言語処理における文章評価の研究成果を参考にして作成したもので、文章の一貫性とそれに関連する10項目である。収集したデータを用いて、一般化線形混合モデルを用いた重回帰モデルによる分析を行い、評定者間のズレを考慮しながら、文章の一貫性に影響を与える要因を検証した。その結果、文章の一貫性には、「段落間のまとまり」および「論理性」が影響を与えていることが明らかになった。本研究のテーマである読解テストの文章における一貫性に関する理解を深めるとともに、文章中の様々な要因間の関連性を示すことができた。この結果は、関連の研究会において発表し、現在、研究論文としてまとめている。 2) 日本語学習者を対象とした読解テストの問題項目に対して、日本語教育の専門家8名よる評定を依頼し、全ての評定結果を収集した。評定項目は、英語および日本語の読解テストの質問種に関する研究成果を参考にして作成した。 3) NLPモデルに基づいた文章の関連度を数値化することを目的として、プログラムを作成した。現在までに対象となる文章全てのテキスト化と、形態素解析の作業が完了した。 4)関連領域の文献調査を行った。本研究は、主に日本語教育分野と自然言語処理分野の2つの領域に関わる研究である。日本語教育分野においては、作文評価の研究、文章の一貫性に関する研究などから関連研究の成果をまとめ、本研究の位置づけを明確にした。自然言語処理分野においては、文章の数量化の研究、言語形態的指標を用いた文章評価の研究、機械学習の手法を用いた文の予測の研究などの成果を収集している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、読解問題の文章に対して人手による評定を行った結果を対象とした研究とその文章を機械的に処理し、自然言語処理の技術を応用する研究に分けられる。前者に関しては予定通り研究成果をまとめたが、後者に関しては、自然言語処理に関する専門知識とプログラムによる実装の2点が必要とされ、この習得に要する時間が、コロナウイルス関連の事情により計画通り十分な時間が確保できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までの実績により、本研究の目的1)人が評定する文章の一貫性は,自然言語処理の技術を用いて定量的に表現することが可能か。に関しては部分的な結果が得られた。今後は研究計画に従い、研究目的2)文章の一貫性は,読解テストの難易度に影響を与えているのか。および3)その影響は,設問の種類により異なるかという点について、分析作業を進め、成果を報告する予定である。
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