研究課題/領域番号 |
20K00911
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
黛 秋津 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00451980)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 黒海 / ロシア / オスマン帝国 / ウクライナ |
研究実績の概要 |
本研究1年目の2020年、新型コロナの影響で予定していた調査が実施できず研究遂行に大きな影響があったが、2年目である昨年度も状況は変わらず、想定していたような実績は上げられていない。そうしたなか、史料を読み進めている18世紀の西欧諸国とロシアの黒海進出過程に関しては、以前より、ドナウ川と黒海に隣接するオスマン帝国の二つの付庸国ワラキア・モルドヴァの重要性について指摘しているが、ハプスブルク側とロシア側の刊行史料の内容を踏まえて両公国とオスマン帝国の関係を捉え直し、その内容を21年11月にプロジェクトの研究会で報告した。この口頭発表の内容は、いずれ論文として公開する予定である。 2022年に入ってからロシア=ウクライナ関係が緊張し、2月24日に紛争が勃発したが、本課題の研究成果を踏まえ、黒海地域の視点からロシアの勢力圏の思想と実態を歴史的に俯瞰した論考「歴史から見たロシア「勢力圏」の虚実――黒海沿岸地域におけるロシアの影響力」を雑誌『外交』に執筆し、歴史研究の立場から今回のロシアによるウクライナ侵攻の背景の一端を論じた。 本研究にとって、ロシア帝国の大使や領事の報告は重要な内容を含んでいるため、当初の研究計画ではモスクワの外務省付属外交文書館での史料調査が不可欠と考えていたが、当面モスクワでの調査は困難と思われるため、主にオスマン帝国側と西欧諸国側の史料に依拠して研究を進めざるを得なくなった。それに伴い、西欧諸国と黒海地域との間の人の移動に研究の比重が置かれることになる。その一方で、18世紀にロシア帝国領となった黒海北岸部の人の移動は、今回のウクライナの問題にも関わり、社会的要請が大きいため、このテーマについても、刊行史料を用いて可能な限り明らかにするつもりである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響が続き、2021年度も、海外調査のみならず国内の大学図書館での調査も十分に実施できなかった。そのため、刊行史料の乏しい本課題の研究遂行に支障をきたし、研究の進捗は当初の予定よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
現在の状況からロシアでの文献調査は難しいと判断せざるを得ず、研究の軌道修正は必須と考える。今年度はイスタンブル、ウィーンなどでの史料調査を行いたいと考えているが、もしそれが実現できないことになれば、本研究事業を1年延長することも考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度に引き続き2021年度も新型コロナの影響で史料調査が全く行えなかったため、史料調査のための旅費が未使用となった。その分の出張旅費は可能な限り今年度使用するが、状況次第では研究期間の延長もあり得る。
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