研究課題/領域番号 |
20K00913
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
永原 陽子 京都大学, 文学研究科, 教授 (90172551)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 人骨研究 / 遺骨返還 / 植民地主義 |
研究実績の概要 |
本研究初年度の2020年度には下記「進捗状況」部分で説明する通り、予定していた海外での文書館史料の調査および国内での医学系雑誌の分析が不可能であったため、先行研究の分析を進めつつ、南アフリカ、ケープタウン大学での遺骨返還プロジェクト「サザーランド・プロジェクト」についてインターネットで入手可能な資料に基づいて調査するとともに、同プロジェクトの背景となる南アフリカにおける「人骨研究」の歴史について、同時代文献を利用して分析することとした。 その結果、「サザーランド・プロジェクト」については、プロジェクトそのものの具体的な内容とともに、その背景となる法制度の展開についてほぼ全容を把握することができた。ただし、博物館等の遺骨取り扱い指針が遺骨返還の対象とする「人種主義的研究にかかわって収集されたもの」との条件は極めて論争的なものであり、それをめぐっていかなる議論がなされたのかについて、今後のインタビュー調査によってよりいっそい詳しく明らかにする必要がある。 一方、南アフリカにおける「人骨研究」の歴史については、1825年設立の南アフリカ博物館の「ブッシュマン」研究と1905年「英国科学推進協会」年次大会(南アフリカで開催)との関係を明らかにした。さらに、それらが第一次世界大戦後のヴィッツヴァータースラント大学およびケープタウン大学での解剖学・先史人類学講座成立につながっていく経緯を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では「人骨研究」の歴史に関する史料調査の大きな部分を海外の文書館およびインタビューで行う予定であったが、2020年度、新型コロナウィルス感染の世界的拡大で海外渡航が不可能であったため、計画していたタンザニアの調査を実施できず、次年度以降に予定していた調査を前倒して行うことも不可能であった。また、国内での史料調査として予定していた京都大学医学部図書館の利用が制限され事実上利用できず、同じく東京大学医学部図書館の利用も不可能であったため、19世紀末~20世紀半ばの医学系雑誌という刊行史料の調査も行うことができなかった。 そのため、調査の大部分を本研究の準備段階で収集していた医学系雑誌論文等の分析に限定せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度後半に、本来予定していたのとは順序を変更し、可能な地域での海外調査を実施することを目指すが(相対的に可能性の高いのはイギリスおよびドイツ)、現時点では見通しは立たない。オンラインで入手可能な同時代刊行物(「人骨研究」に携わった医学・人類学研究者の研究論文、回想録など)の分析に重点を置く。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外調査のために予定していた旅費を使用しなかったため。 2021年度に海外調査旅費として使用する。
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