研究実績の概要 |
2021年度は当初予定の海外調査を実施できなかったため、日本で入手可能な文献史料、主として、①19世紀末~20世紀前半のドイツ語圏の人類学・医学雑誌("Zeitschrift fuer Ethnologie", "Zeitschrift fuer Morphologie und Anthropologie)、② 20世紀初頭イギリス/南アフリカの"Association for the Advancement of Science"の報告書、 ③ 20世紀南アフリカの医学研究者の著作・文書(ケープタウン大学デジタルコレクションを含む)、④近年の遺骨返還に関する情報(研究文献ならびに新聞等の報道)、 の収集・分析を行った。 ①ではアフリカ各地での人骨収集過程に関する記述を探す形で読解を進めた。結果的に南部アフリカならびに東アフリカに関するものが中心となった。その理由の分析のためにはさらに網羅的な調査が必要。 ②では南アにおける科学者の現場調査、「人」を相手にした調査の実情にかかわる記述を植民地統治体制との関連に留意しながら辿った。とくに「コイサン系」住民の統治にかかわる場面や、人の移動の規制や「人種登録」としての「パス制度」に関わる場面が調査に利用されていることがわかった。 ③では、Raymond Dart, Phillip Tobias, Alan Morrisの著作ならびにそれらの研究者に関する文書を読み、南アの「人骨研究」の研究史的な流れを辿った。 ④では近年続々と実例が産まれているヨーロッパ各国の博物館・大学からの遺骨返還の経緯、返還先の事情、またとりわけ背景となる同時代の法制度等についての情報を収集した。
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