研究課題/領域番号 |
20K00917
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
黒岩 幸子 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80305317)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 千島列島 / 南千島 / 戦争記憶 / 北方領土問題 |
研究実績の概要 |
2020年度は「千島をめぐる戦争の実像」をテーマとし、①1930年代に始まる千島列島の軍事化と1941年12月の日米開戦後の日米ソ3か国の軍事作戦をたどり、②千島海域と空域での戦闘と被害、③日本人将兵の籠城生活、米国人・中国人捕虜、建設作業に使われた朝鮮人労務者、戦時も操業を続けた漁業者と女工、「慰安婦」らの状況、④戦時およびソ連統治下での南千島居住者の生活を明らかにする予定だった。 しかし、コロナ禍のために予定していた海外調査すべてと東京での調査ができず、札幌での数日間のみに限られた。そこで、②③は次年度に先送りすることとし、これまでに一定の資料収集ができていた、①および④に関する資料の読み込みを進めた。 特に④については、1945年から1948年に南千島居住民がソ連から受けた被害のみが強調して語られ、かつ記録されている傾向があるが、実際には日本人とソ連人が共存して生活していた期間が1~2年間ある点に焦点を当てて、記憶と記録の再編を行う必要があることがわかってきた。また、南千島の旧島民は行政用語では「引揚者」と呼ばれているが、実際には日本の領土であった南千島から本土に移動した「離島者」であり、現在なお解決していない北方領土問題の枠組みの中に置かれ続けた、特異な立場と経験を有する集団である点がこれまで十分に論じられていない点にも気づいた。これらについては、日ソ戦争の共同研究グループで出版が予定されている著書の中で論じるために、すでに論考の執筆に入った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度に予定していた、ロシア(サハリン・ペテルブルグ)での調査がコロナ禍のせいでできなかったために、サハリンの研究者をとおしてアクセスが可能になると期待していた史料やペテルブルグでの資料収集がまったくできなかった。現在は日本側の史料の読み込みによって研究を進めているが、日ソ戦争を扱う限り欠かせない、ソ連側の調査が遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も海外調査には期待できないので、まず日本側の史料からわかる部分だけでも論文化してゆく。あとはコロナの収束を見つつ東京、海外への調査を広げてゆく予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度の経費は、東京(防衛研究所)、札幌(北海道大学図書館など)、サハリン(ユジノサハリンスクの国立文書館と郷土史博物館)、ペテルブルグ(各公文書館と博物館など)に夏・冬に2~4週間滞在して調査するためのものだったが、コロナ禍ですべてキャンセルを余儀なくされたために、ほどんど使用せずに残った。これらの出張はすべて次年度に延期したので、出張が可能になり次第、順次実行して経費を使用していく予定である。
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