研究課題/領域番号 |
20K00917
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
黒岩 幸子 岩手県立大学, 公私立大学の部局等, 教授 (80305317)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 千島列島 / クリル諸島 / 日ソ戦争 / 北方領土問題 / 北千島 / 南千島 |
研究実績の概要 |
2021年度は、「ソ連支配下の千島の実態と住民移動」をテーマとして、ソ連軍占領後の千島(クリル)におけるソ連側統治の実態、ソ連人の入植、日本人の離島について研究を進める予定だった。前年度に引き続き、コロナ禍で国内外での調査がほぼできない状況が続いた。また、2022年にはロシアによるウクライナ侵攻により、ロシア人研究者との協力が難しくなり、ロシアへの渡航も制限されるなど、さらに研究環境が悪化した。 しかし、オンラインでの研究者同士の意見交換などは以前に比べて活発化した。特に、ソ連占領後の樺太・千島(サハリン・クリル)のソ連側統治文書の講読会などに参加することにより、ソ連の行政文書からソ連による統治の方向性が部分的ながら明らかになってきた。 北千島と南千島では、日本人残留者の生活に大きな差がみられた。北千島ではほぼ全員が収容所に入り、ソ連側に管理されたのに対し、日本人島民の居住地が広範囲に広がっていた南千島では、管理体制は十分に整っていなかった。 ソ連占領期の千島の日本人とソ連人の混住については、海外のドキュメンタリー映画やロシアのテレビ番組など、日本でアクセスできる映像資料からも生活の断片がうかがい知れることが分かった。 本年度の研究成果は、単著『北方領土のなにが問題?』(歴史総合パートナーズ、清水書院、2022年8月刊行予定)。共著『日ソ戦争史の研究』(勉誠出版、2023年2月刊行予定、担当:「第4部第3章 ソ連による占領統治下の千島社会」)に反映させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍に加えて、ロシアのウクライナ侵攻により、ロシアにおける調査がまったく行えず、ロシア人研究者との協力体制も難しくなったことで、予定していたソ連側資料へのアクセスが難しくなった。
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今後の研究の推進方策 |
ロシアが戦争当事者となる事態によって、コロナ禍が収束しても、研究開始時に予定していた海外調査等は望めなくなった。したがって、サハリン、モスクワ、ペテルブルクの文書館や研究所での調査は取りやめて、日本国内での文献調査に絞る。北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター図書室に未見のソ連文書があることがわかっている。近年目覚ましい成果を上げている樺太研究者たちが有する資料に、千島関連のものが若干含まれることがわかり、協力を仰ぐ予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度から引き続くコロナ禍で海外調査が実施できず、さらにウクライナ侵攻により事態が悪化して、予定していた旅費がほぼ手付かずで2年度分残った。来年度も状況に大きな変化は期待できないため、国内の資料調査に特化する予定である。海外調査のための旅費はこのまま留保しておく。
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