研究課題/領域番号 |
20K00925
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
朱 鳳 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 教授 (00388068)
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研究分担者 |
塩山 正純 愛知大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (10329592)
奥村 佳代子 関西大学, 外国語学部, 教授 (10368194)
伊伏 啓子 北陸大学, 国際コミュニケーション学部, 講師 (40759841)
千葉 謙悟 中央大学, 経済学部, 教授 (70386564)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 漢訳経済書 / 宣教師 / 漢訳語 / 文化交流 |
研究実績の概要 |
日本の西書翻訳の最盛期は明治初期である。維新の機運に乗じて、政治、経済、法律、医学などの西書が大量に翻訳出版された。本研究は明治初期に日本語に翻訳された西洋経済書に注目し、翻訳語として用いられた漢字翻訳語を史学研究を含めて多角的に考察し、明治初期の翻訳語構造を明らかにすることを目的とする。 2020年度本研究の研究計画はこれまでの申請者の研究成果を踏まえて、 翻訳西書の中から経済書を研究対象とし、漢字翻訳語に焦点を当て、東西文化交流史における漢字翻訳語の生成、言語学における漢字の語構成、音訓読みなどを多角的に考察するとしていた。具体的には、Samuel Robbins Brown の漢訳書『至富新書』の原書、日本訳書における歴史的、言語的なアプローチと考えていた。しかし、コロナウイルス感染症の影響により、海外での文献調査を行うことは実施できなかったが、研究代表者と分担者はオンライン会議を通して、研究資料、研究方法、研究発表について議論を行った。この1年間、代表者と分担者はそれぞれで研究発表と論文出版し、着実に2020年度の研究計画実行の下準備をしてきた。 Samuel Robbins Brown の漢訳書『至富新書』に関する研究成果は、2021年度にずれ込んでしまったが、第13回東アジア文化交渉学学会(2021年5月8日)で代表者と分担者がパネルを組んで発表する予定である。 この1年間の研究を通して、明治初期の西書の入手ルート(原書或いは漢訳西書)、翻訳方法(和訳、 漢訳西書への訓点付け、全訳、抄訳)、翻訳者の異なる文化背景(洋学者、蘭通詞、唐通事)などの多角研究の第一歩になると確信している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究計画は研究対象とする経済翻訳書の選定と学会発表であったが、代表者と分担者はメールあるいはオンライン会議を通して、数回の研究打ち合わせを行い、研究の役割分担を決めた。さらに、オンラインで『致富新書』の漢訳書、日本語訓点本、日本語翻訳本、原書(英語)を共有しながら、それぞれの研究立場から1年間をかけて、研究を行った。 この1年間の研究進捗状況は次のようにまとめられる。1)代表者朱鳳は原書(英語)と漢訳書の比較研究を行った上、原書はFirst Lessons in Political Ecomonyであると明らかにした。さらに漢訳書の翻訳背景と西洋新概念の翻訳語についても分析している。2)分担者千葉謙悟は「中国のSamuel Robbins Brown: 来華宣教師のネットワーク」というテーマで『致富新書』の編集者である Brownの中国、日本での言語活動について研究を行っている。3)分担者伊伏啓子は「『致富新書』に見られる生活用語について」というテーマで『致富新書』とその日本語翻訳本『致富新書訳解』に見られる生活用語を中心に考察している。4)分担者塩山正純は「『致富新書訳解』が経済を説明したことばについて」を中心に、経済用語を語構成の視点から研究している。5)分担者奧村佳代子は『致富新書』の訓点本と和訳本の比較研究を行っている。 研究発表に関して2020年度に間に合わなかったが、2021年度も引き続き研究を行い、それぞれの研究成果を学会で発表した後、学術雑誌に投稿する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究課題は選定した経済翻訳書の原書との比較研究を引き続き行うことである。その具体的な推進方策は次のように立てている。 ①原書と訳書を比較研究し、漢字翻訳語の正確性を検証する。また一書多訳の場合、漢字翻訳語における語構成の異同、音訓の異同、品詞の異同などを多角的に比較し、その異同および共存できた理由をつきとめる。 ②海外の図書館での原書調査(イギリスの図書館を予定している)。 ③ワークショップを2回開催(進捗状況報告、学会発表(漢字文化圏研究会)の準備)。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナウイルス感染症拡大のため、国内外へ資料調査、学会参加などの旅費が発生しなかったため、来年度(2021)に繰り越し金額が多く残ってしまったが、2021年度にコロナウイルス感染症が収束した後に、国内外へ資料調査、学会参加への旅費及び関連経費に使用する予定である。
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