研究課題/領域番号 |
20K00928
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研究機関 | 国際日本文化研究センター |
研究代表者 |
白石 恵理 国際日本文化研究センター, 総合情報発信室, 助教 (30816260)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 蝦夷 / アイヌ / 異人観 / 夷酋列像 / 写本 / 松平定信 / 松浦武四郎 / 蝦夷漫画 |
研究実績の概要 |
2020年度は、本研究課題の起点となった論文「見立てと写しのアイヌ戯画――メディアとしての 〈夷酋列像〉」(稲賀繁美編著『映しと移ろい――文化伝播の器と蝕変の実相』花鳥社、 2019年) を広く海外へ紹介することを目的に、修正・加筆のうえ翻訳し、英文学術誌 "Japan Review” へ投稿した。2名の査読者による審査の結果、採択され、2021年度刊行号への掲載を目指し、手直しを進めている。 また、幕末期に6度の蝦夷踏査を経て開拓判官となりアイヌ民族との交流も深かった松浦武四郎(1818-1888)と、京で歌人・陶芸家として活躍した尼僧大田垣蓮月(1791-1875)との交流を取り上げた論文「蓮月と松浦武四郎――京と蝦夷、文化・情報の邂逅」を執筆した。2021年度刊行予定の書籍(北海道大学文学研究院芸術学研究室 編『アートと、そのあわいで-北大・芸術学研究室の現在地』[仮題])に掲載予定である。本論文執筆の過程では、蓮月と親交の深かった富岡鉄斎筆の蝦夷/北海道関連書画一覧を調査・整理し、今後の論文への活用を準備している。 江戸後期のアイヌ表象をめぐる動きと、明治期の画人によるアイヌ像の受け止め方を同時に調べることにより、江戸から明治期までのアイヌ像の変遷を大まかに把握することができた。また、「夷酋列像」をめぐる論文審査の過程で、査読者より有益な示唆を受け、中国・朝鮮・オランダ・琉球を含む、江戸期における「異人」政策の一つとしてアイヌ表象を考える視点も得ることができた。今後の展開における課題の一つとして考えていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、2020年度は予定していた国内での出張調査を全く行うことができなかった。ただ、一方では、当初の予定になかった論文の翻訳、および英文学術誌に投稿できたことは収穫だった。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度はコロナ禍の状況を見つつ、昨年できなかった分も含め、1) 国内での資料実見調査を優先的に進める計画である。具体的には、ウポポイ・北海道博物館・小樽市総合博物館・松前町郷土資料館等、北海道を中心に、「夷酋列像」の写本・模本を有する徳島県立博物館、真田宝物館(長野市)、安芸高田市歴史民俗博物館(広島県)の調査を予定している。また、2) 並行して、松浦静山や松平定信がそれぞれ関与した写本の制作背景について調査研究を行う。万が一、コロナ禍の影響が長引き、国内出張が難しい場合は、2) に関する文献調査を重点的に行うこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大の影響により、予定していた国内出張が全くできず、次年度使用額が生じた。2021年度分の助成金と合わせ、調査研究のための旅費及び物品費等に使用を計画している。
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