東アジアの宮廷工芸(宮殿・調度・服飾)の研究については、従来のような年代・様式・技法などに関心をおく美術史的見地ばかりでなく、宮廷の儀式・行事における身分・立場・状況などを表象する物質文化として理解する観点が重要であることを示した。東アジアの宮廷工芸には、礼制に基づく共通規格とともに、各宮廷の背景にある風土・社会・制度・習俗などを反映した相異特色も現出するので、相対的に検証するうえで好資料となるという観点を示した。本研究は、諸文化を相対的に論じる文化相対主義的歴史観に基づくため、その研究成果は、諸文化の相異特色について合理的に理解し、今日的課題である多文化共生に資する歴史研究となるであろう。
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