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2023 年度 実施状況報告書

盛岡藩の北上川舟運と自然環境の利用に関する総合研究

研究課題

研究課題/領域番号 20K00944
研究機関東海大学

研究代表者

兼平 賢治  東海大学, 文学部, 准教授 (30626742)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード北上川 / 舟運 / 盛岡藩 / 仙台藩 / 自然環境 / 盛岡藩家老席日記雑書 / 石碑・古墓 / 稲井石(井内石)
研究実績の概要

2020年度から3年計画であった本研究は、新型コロナウイルス感染症の影響から、現地調査や史料の写真撮影、講演会などの活動が制限されていたため、進捗状況に遅れがみられたが、2022年度からは影響が限定的となり、活動もほぼ制限なくできるようになったため、2023年度には期間を延長して、さらに研究を進めることができた。
調査では、北上川舟運の実態を伝える下柳千葉家文書についての整理と写真撮影、目録作成を進め、新たに確認した段ボール箱1箱分の文書についても概要把握を行った。また、北上川舟運によってもたらされた石巻産井内石の広がりについて、石巻市、一関市、奥州市、北上市、花巻市で調査を行い、岩石を専門とする研究者と石碑や古墓を実見するなど、流通実態の概要を把握することができた。さらに、宮城県石巻市では井内石を扱う石材商を訪ねて、店主から聞き取り調査を行い、情報提供してもらうとともに、青森県野辺地町では北前船がもたらした石造物から、北上川舟運にも通じる知見を得ることができた。八戸市内の寺院の調査も行い、各地域に特有の石材が利用されている実態も理解することができた。
おもな成果として、1)奥州市と花巻市の寺院の古墓を調査することで、これらの地域にも江戸時代後期に多くの井内石が流通し、墓石として利用されていたことが明らかとなったこと、2)これまでの研究成果を論文にまとめて岩手史学会に投稿し、『岩手史学研究』への掲載が決定したこと、3)これまでの研究成果をもとに北上市立博物館とシンポジウムを開催したこと、4)これまでの研究成果を市民に還元すべく、講座での講演を4回行ったこと、5)これまで写真撮影を行ってきた下柳千葉家文書の整理を行い、目録作成を行うとともに、未調査だった段ボール1箱分の文書の概要調査を行ったこと、がおもに挙げられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度(1年目)、2021年度(2年目)は、新型コロナウイルス感染症の流行により、出張に制限が設けられるなどしたため、現地調査やフィールドワークを実施することが困難な状況にあり、開催を予定していたフィールドワークと研究会は、実施を見送らざるを得なかった。岩手県奥州市での下柳千葉家文書の撮影も、限定された回数のみの実施にとどまった。
こうした状況にあったことから、1年目は機材を購入し研究体制を整えることや、データベースの構築に注力することで、2年目以降の研究に備えた。2年目も新型コロナウイルス感染症の流行による影響を受け、出張が制限されるなどしたことから、現地調査やフィールドワークを十分行うことができず、研究の幅を広げるのに大きな支障となった。こうしたなか、データベースの構築については、着実に進めることができた。
2022年度(3年目)は、新型コロナウイルス感染症の影響が限定的となり、研究代表者、そして研究協力者も出張が可能な状況となったことから、これまで実施を見送っていた現地調査・フィールドワークを実施し、下柳千葉家文書の写真撮影も作業を進めた。
このように、3年目においてやっと現地調査・フィールドワークを実施できたことから、遅れを取り戻すべく、延長を願い出て4年目となった。研究代表者、研究協力者ともに研究を進捗すべく調査・研究を進めた結果、北上川舟運による井内石の流通実態について、新たに補足調査をする必要が生じたこと、舟運の実態解明に不可欠な下柳千葉家文書の未整理文書が想定を超えた点数であったことから、もう1年再延長をする必要が生じており、「やや遅れている」と判断した。

今後の研究の推進方策

2023年度は、舟運実態を解明するうえで不可欠な文書である下柳千葉家文書について、これまで撮影してきた分の目録化を進めるとともに、未整理分の段ボール1箱分の文書の概要調査を行い、写真撮影も一部行った。しかし、想定を超える文書の点数であったことから、まずはこの文書について、史料撮影を早急に進めて研究に活用できるようにすることに注力する。
また、これまでの調査・研究で、北上川舟運の遡航時における井内石運搬の実態を明らかにしてきたが、2023年度に行った花巻市内の寺院の古墓調査から、盛岡藩最大の河岸場である黒沢尻(北上市)よりも北上して流通実態を探る必要性を確認した。そこで、花巻市と紫波町内で補足調査を実施して、黒沢尻以北、終着点である盛岡市の新山河岸までの間の流通実態の解明に努めることにしている。

次年度使用額が生じた理由

現地調査や文書の撮影に必要となる機材については、2020年度に購入して準備を進め、また、研究を推進しデータベースを構築するために必要な文献については、2020年度と2021年度に購入してほぼ揃え研究協力者にも共有化を図ったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、2020年度、そして2021年度と出張が制限され、予定していた現地調査やフィールドワークの多くが実施できなかったこと、さらに、下柳千葉家文書の撮影についても実施回数が限られたことから、これらに充てる予定であった旅費や人件費が残ってしまった。
2022年度・2023年度は、新型コロナウイルス感染症の影響が限定的となったこともあり、積極的に現地調査や講演会などを開催して研究を進め、予算の適切な執行に努めたが、もとの残高が多かったこともあり、次年度使用額が生じた。ただし、まだ下柳千葉家文書の未整理分の文書を撮影する必要があり、また、これまでの研究で明らかにしたことから新たに補足調査が必要になった場所(花巻市内の寺院の石碑・古墓調査)も生じており、2024年度は再延長を申請して認められた。そこで、撮影・調査について、予算の適切な執行をしていくことにしている。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 5件)

  • [雑誌論文] 北上川舟運と石巻産井内石との関係2024

    • 著者名/発表者名
      兼平賢治
    • 雑誌名

      『岩手史学研究』(岩手史学会)

      巻: 105 ページ: ‐

    • 査読あり
  • [学会発表] 北上川をめぐる自然環境と物資輸送ー井内石を中心にー2024

    • 著者名/発表者名
      兼平賢治
    • 学会等名
      (共催)地域史研究講座2024「近世資料から読み解く胆江地方の実態」(えさし郷土文化館)
    • 招待講演
  • [学会発表] 野辺地町の石から探る北上川舟運の謎ー北前船と北上川舟運が運んだ石ー(野辺地町中央公民館)2024

    • 著者名/発表者名
      兼平賢治
    • 学会等名
      (共催)野辺地町歴史を探る会歴史講座
    • 招待講演
  • [学会発表] 奥州市資料調査報告ー2022~2023年度を中心にー2024

    • 著者名/発表者名
      高橋和孝(研究協力者)
    • 学会等名
      (共催)地域史研究講座2024「近世資料から読み解く胆江地方の実態」(えさし郷土文化館)
  • [学会発表] 藩境を越える人と物の移動ー盛岡藩と隣藩との関係ー2023

    • 著者名/発表者名
      兼平賢治
    • 学会等名
      岩手県文化財愛護協会郷土史学習会(盛岡八幡宮参集殿)
    • 招待講演
  • [学会発表] 盛岡藩と仙台藩の関係ー『新編北上市史』が描く藩境ー2023

    • 著者名/発表者名
      兼平賢治
    • 学会等名
      北上市民大学(おでんせプラザぐろーぶ北上市生涯学習センター )
    • 招待講演
  • [学会発表] 北上川舟運と石巻産井内石(稲井石)の広がり、パネルディスカッション2023

    • 著者名/発表者名
      兼平賢治
    • 学会等名
      (共催、招待講演)開館50周年記念シンポジウムPartⅡ 北上川舟運がつないだものー歴史をひもとく博物館の役割ー(北上市立博物館)
    • 招待講演
  • [学会発表] 北上川舟運の概要、パネルディスカッション2023

    • 著者名/発表者名
      渋谷洋祐(研究協力者)
    • 学会等名
      (共催)開館50周年記念シンポジウムPartⅡ 北上川舟運がつないだものー歴史をひもとく博物館の役割ー(北上市立博物館)
  • [学会発表] 北上川と信仰ー紫波周辺を中心にー、パネルディスカッション2023

    • 著者名/発表者名
      岩舘岳(研究協力者)
    • 学会等名
      (共催)開館50周年記念シンポジウムPartⅡ 北上川舟運がつないだものー歴史をひもとく博物館の役割ー(北上市立博物館)

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公開日: 2024-12-25  

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