日本の民俗学は郷土研究によって支えられてきたことは、周知の事項に属するが、それを組織化するにあたって、全国の民俗事象を比較する上で日本各地に自身の「郷土」を研究する郷土史家が必要とされた。この傾向は戦後もしばらく続く。ただし、「郷土」を離れ、その後長く東京その他都市部の教育・研究機関で活動する事例が目立ってくる。この範疇に属する場合、当該の人物の位置付けは狭義の郷土史家とは異なる要素を持つ。しかも、中央に終始拠点を置くことなく、郷土との往還をしばしば行う事例も見られ、この点において中央の研究者と郷土史家ーという研究史上に見られた関係は次第に後退しているといっていい。
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