研究課題/領域番号 |
20K00955
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
柳原 敏昭 東北大学, 文学研究科, 教授 (30230270)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 大島正隆 / 大学アーカイブズ / 史学史 / 東北地域史 |
研究実績の概要 |
2021年度は、本研究課題の主たる対象である東北大学史料館所蔵「大島正隆文書」について、前年度未撮影分について撮影を行い、すべての資料について撮影を終えることができた。現在は撮影状況の点検、目録との照合、タイトル付与などの整理作業を遂行しているところである。 成果物としては、論文「創立期の東北大学日本史研究室」を脱稿した。これは、現在の東北大学大学院文学研究科日本史研究室の前身に当たる東北帝国大学法文学部国史研究室の創立期(1923年~1945年)の様相を、主としてそこで行われた教育、地域史研究、学会運営に着目して論述したものであり、従来知られていなかった事実を数多く発掘するとともに、「地方の」「後発の帝国大学」に置かれた日本史研究室の他大学と比較した際の特色と歴史的位置づけを明確にすることができた。 依拠した史料は、新聞記事(『河北新報』)、法文学部発行の学術雑誌(『文化』)、学会事務担当者の旧蔵資料が主なものであるが、「大島正隆文書」に含まれる大島正隆書簡等も多数活用した。このことにより単なる制度的な変遷を追うだけの記述ではなく、当時研究室に在籍していた人物の視点も盛り込むことができ、複眼的・立体的な叙述とすることができた。また、大学アーカイブズの活用という面でも意味があった。論文はすでに最終校正を終えており、小澤実・佐藤雄基編『史学科の比較史』(勉誠社)に収載されて2022年5月に刊行される予定となっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究課題では、当初、①大島正隆文書の画像データベース作成、②東北大学史料館の所蔵にかかる以外の大島正隆関連資料の調査、③大島正隆が調査等で足跡を残した場所の現状調査を予定していた。 このうち、①については所蔵者である東北大学史料館での閲覧、撮影に制限が伴ったが、撮影終了に至った。現在は、点検・整理作業をすすめている。 ②③は、旅行を伴うとともに、調査先との合意が必要な事項であった。そのため新型コロナウイルス感染症の感染拡大による制限を受け、実施できていない。研究代表者が2020年度から研究科長となり、一般教員以上に強く行動制限を受けていることも影響している。 以上から、本研究課題の進捗は「遅れている」と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
撮影ずみの資料については、整理をすませる。点検の結果、不鮮明な写真もあることから、再撮影を実施する。資料の形態から素人の撮影では不鮮明にならざるを得ないものもあり、その場合は専門業者への撮影委託も検討する。その上で、デジタル画像データベースを構築して、東北大学史料館等のウェブサイトから公開できるようにする。 調査旅行を伴う事項については、新型コロナウイルス感染症の状況を見ながら実施の時期や方法を慎重に検討することとなる。今年度は、一昨年度、昨年度より移動制限が緩和されているため、ある程度の調査旅行は可能かと考えられる。しかし、進捗状況によっては、本研究課題の期間を1年間延長することも考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度は、調査旅行の費用を計上していたが、新型コロナウイルス感染症の影響で実施できなかった。また、多数の資料の撮影を行ったが、形状が多様で、研究代表者自身で行わざるを得なかったため、謝金が発生しなかった。
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