本研究課題は、日本中世史研究の基本史料の一つ、佐藤進一他編『中世法制史料集』全7巻(岩波書店)のいわば増補版に相当するものを、東京大学史料編纂所のデータベースシステム上で作成し、日本中世の法制史料を高度研究資源化することを第一の目的としている。本史料のデータベース公開が実現すれば、文字列検索や関連史料との相互参照による同書の活用の便宜が格段に向上し、学界における今後の研究の進展に大きく寄与することが期待される。 研究期間を延長した2023年度は、研究協力者の協力を得て東京大学史料編纂所のデータベースシステムのシステム改修を行い、『中世法制史料集』第6巻のフルテキスト入力データを、古文書フルテキストデータベースの一部として登録し、公開直前の段階にいたった。なお若干の校正などの作業を経て、近日のうちに史料編纂所ホームページより公開の予定である。 本研究のもう一つの目的は、法制史料の高度研究資源化を通した、日本中世における法制史料のあり方の再検討である。本年度も、研究代表者の不測の事態の発生などにより、予定した史料調査を十分に実施できなかったが、史料編纂所と奈良文化財研究所合同の薬師寺の史料調査に参加し、近世・近代にまでわたる同寺史料について大きな知見を得た。 また、研究代表者の既発表の室町幕府法・武家家法(戦国法)に関する論文をまとめ、さらに二本の新稿を加えた論文集『室町戦国法史論』の刊行準備をすすめた。この研究は本研究計画ときわめて関連性が高く、本来は本研究計画の終了後に行う予定であったが、新型コロナウィルス感染症蔓延により、予定していた公家法・公家家法・寺社法の史料調査が実施できない状況に鑑み、2020年度より、計画を一部変更し先行して進めたものである。2023年度に刊行予定であったが、不測の事態の発生等により、2024年度に刊行を延期した。
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