本研究の目的は、尚家の近現代史についての実証的研究を行い、東京・沖縄を結ぶ旧支配層ネットワークの形成過程およびその社会的影響力について明らかにすることである。最終年度(4年目)となる今年度は、引き続き広範な史資料収集を行うとともに、「敗戦・占領(1945年)から日本への復帰(1972年)まで」の検討および本研究全体をまとめる作業などを行った。 広範な史資料収集については、特に、那覇市歴史博物館において、近代「尚家文書」についての充実した調査を引き続き行うことができ、デジタルデータ化の作業もさらに進展した。また、所属大学が未所蔵の沖縄近現代史関連文献を購入収集した。 加えて、デジタルデータ化した史料を含め、近代「尚家文書」を用いた共同研究を行う場として、2022年5月に立ち上げた「近代尚家文書研究会」(事務局:那覇市歴史博物館)を、2023年度内には5回実施した。 雑誌論文としては、主に尚昌が当主であった時期について、近代「尚家文書」を用いて侯爵家の諸活動および代替わりにともなう家政機関の変遷などを明らかにした、「1920年代前半における尚侯爵家について―尚典・尚昌・尚裕の代替わりに注目して―」(『沖縄文化研究』51、法政大学沖縄文化研究所、2024年3月)を発表した。 学会発表としては、琉球沖縄歴史学会11月例会(2023年11月11日、沖縄県立芸術大学)において、「尚家文書からみる尚昌・尚裕の時代」と題して口頭報告を行った。同報告は、尚昌・尚裕が当主であった時期であり、かつ尚家文書が継続的に現存している1920~26年、1945~47年について、尚侯爵家の動向を検討したものである。
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