研究課題/領域番号 |
20K00982
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
大日方 克己 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 教授 (80221860)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 古代出雲 / 出雲国風土記 / 出雲風土記抄 / 出雲風土記解 |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染症拡大の影響で、県外での史料調査ができなかったため、主として県内の資料調査、収集と、ネット等を利用した史料調査、収集を中心に行い、その成果の一部と、以前から続けて本研究課題に継続された『出雲風土記抄』『出雲風土記解』についての現時点でのまとめを行い、「『出雲風土記抄』の成立と諸本」と題する論考に整理した。そのなかでは、本居宣長とのネットワークの中で『出雲風土記抄』を入手した内山真龍一門が、その影響を受けて天明6年(1786)に出雲の現地調査を行い、現地の実見、神魂神社の秋上得国や松江藩士らとの言談などの成果をとりこみながら『出雲風土記解』を著述していく過程の一端を新たに明らかにした。『出雲風土記解』は『出雲風土記抄』とともに現地名と風土記地名を結びつけ、古代につながる地域の歴史意識形成と風土記解釈に大きな影響を与えたことは、これまでも指摘され、研究代表者のこれまでの研究の中でも展開してきた問題であるが、今年度の『出雲風土記解』の言説の形成過程の分析でもそれをより明確にしていくことができつつある。 また『出雲国風土記』に記され、出雲地域の神話的古代像のポイントとなる「国引詞章」、記紀神話から展開していくヤマタノオロチ神話の舞台としての斐伊川の言説についての中世末期、近世から近代にかけての言説資料の収集を進めた。前者については、近世の荷田春満から本居宣長へと展開する解釈と現地比定、近代の後藤蔵四郎、津田左右吉から戦後歴史学の石母田正へという言説の展開を分析している。それとともに、中国古典からの影響という視点から風土記神話そのものを相対化する論にも着目すべきだ考え、史料収集と分析を進めた。 これらについてはまだ史料収集と分析の途中であり、結論的な成果を提示するまでには到っていないが、ある程度の展望は見えてきている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナ感染症のため、県外への移動が制限されたため、当初予定されていた史料調査出張がほとんどできなかった。そのため調査にもとづく写本等の新たな史料収集ができなかったことが、遅れの大きな理由である。 そのかわりに、県内の調査、ネットによる資料と情報の収集、整理につとめ、次年度以降の研究のための基礎作りを行った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナ感染症の終息が見通せないため、県外出張による史料調査、収集が引き続きほとんどできなくなるだろうことを前提として、研究計画全体を見直して、言説形成過程に直結する近世から近代までの資料を網羅したリスト、およびこれまで収集してきた出雲国風土記と関係書の諸本の詳細な編年資料の作成行うことを当面の目標とする。それらをふまえながら、当初計画にもあった「国引詞章」の言説展開過程を追うことを進めて行きたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症拡大による移動制限等のため、県外出張ができず、旅費支出がなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度も、新型コロナ感染症の終息が見通せないため、旅費支出が予定より大幅に少なくなることが予想される。図書や、ネット等を通じた史資料収集費用に振り替えていく 予定である。
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