研究課題/領域番号 |
20K00987
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研究機関 | 京都橘大学 |
研究代表者 |
後藤 敦史 京都橘大学, 文学部, 准教授 (60710671)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 海防 / 大阪湾 / 摂海 / 幕末政治 / 幕末外交 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、大阪湾を軸にして、幕末政治史の通史像を再検討することにある。この点でいえば、当該年度に日本史研究会大会(2021年10月10日、於立命館大学)で「「摂海」防備からみる幕末政治史」と題して報告を行ったこと、および2022年2月にその大会報告の内容が『日本史研究』714号に学術論文として掲載されたことは、本研究課題の遂行において大きな意義を有する。 同大会報告、および学術論文では、徳川幕府が幕末期を通じてどのように「摂海」の防備を捉えていたか、という点について、1850年代から1860年代中頃までの見通しを立てた。この報告および論文を通じて、史料上の「摂海」という語句と、地理的な大阪湾の相違も検討することができた。また、大阪湾防備に関わった鳥取藩や大和郡山藩などの諸藩の動向も議論に組み込んだ。本研究課題では、各政治主体の「せめぎ合い」を重視して研究を進めるという方法を採用しているが、幕府および大阪湾防備を担う諸藩の「せめぎ合い」について論じることができた。これは、本研究課題にとって重要な成果といえる。 ただし、課題も残されている。新型コロナの感染状況によって、出張による未刊行・未翻刻史料の撮影・収集が十分に遂行できなかった。そのため、当該年度においては、研究課題開始以来、収集してきた刊行史料の読解・分析を優先して実施した。しかし、大阪湾防備を担った藩の動向に関しては、各地域に残されている史料を十分分析できておらず、検討の余地が残されている。また、朝廷の動向についても、まだ十分に検討ができていない。当該年度の研究成果を踏まえ、2022年度以降は、これらの残された課題について追究していくことが重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記の「研究実績の概要」にも記載した通り、2020年度から続く新型コロナの感染拡大状況によって、計画をしていた未刊行・未翻刻史料の調査が十分にできていない。出張を予定していた時期(特に夏、春の授業休業期間)に緊急事態宣言やまん延防止措置等重点措置が公示され、調査を断念したこともある。一方、刊行史料集などの収集を前倒しで行うなど、出張をせずとも検討可能な資料は積極的に収集し、その読解を進めてきた。それでも、本研究課題にとっては各地に残る未刊行史料の分析が重要であり、研究の進捗状況としては「やや遅れている」と判断せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画において、2022年度は、英米仏蘭四カ国艦隊の兵庫沖進入という事件が生じた慶応元年(1865)を重点的に分析する計画となっている。これまで、安政期(1854~58年)から文久期(1861~63年)までに関して、時系列に沿って分析を進めており、今後は、研究計画に沿って、慶応元年の分析を進めていく。ただし、上記のように未刊行史料の収集で遅れがあり、これらの収集も積極的に進めていく(新型コロナの感染拡大状況に留意しながら、収集を実施する)。未刊行史料の収集状況によって、安政期や文久期の政治史的状況についても再検討を行いながら、研究を遂行していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度において、夏期および春期の授業休業期間を利用して、出張による未刊行史料の撮影・収集を実施する予定であった。しかし、夏期の緊急事態宣言、および春期のまん延防止等重点措置の公示という状況に鑑み、出張を見合わせた。そのため、次年度使用額が生じる結果となった。今後は、新型コロナの感染拡大状況には十分に留意しながら、見合わせ・延期とした出張による調査を実施し、計画的に研究費を利用する所存である。
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