研究課題/領域番号 |
20K00989
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
齊藤 紘子 (山下紘子) 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (80736942)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 小藩 / 藩領社会 / 陣屋 / 陣屋元村 / 地域社会 / 都市大坂 / 家中 / 武家奉公人 |
研究実績の概要 |
本研究の初年度にあたる2020年度は、基礎的な作業として、伯太藩領の構造解明に取り組む予定であった。申請時には、具体的な重点課題として、近世後期の伯太陣屋と地域社会について研究を行うと記載していた。 2020年度は、新型コロナ・ウイルス感染症流行拡大の影響により、当初予定していた遠方での史料調査(国文学研究資料館・国立国会図書館・明治大学刑事博物館等)や、史料所蔵者宅での調査作業などは実施できず、また研究会などの対面開催も困難となった。 ただし、本研究計画の中心的な対象であり、博士論文執筆以来研究してきた和泉国伯太藩領の構造解明という課題については、申請書執筆段階では現存が確認されていなかった陣屋元伯太村の村方文書群(青木家文書)の所在が明らかになったため、11月以降、史料群が寄託された和泉市教育委員会市史編さん室において本格的な史料整理を開始し、陣屋および陣屋元村に関する実態解明にむけた作業に着手した。現段階で調査途中のため、論文執筆などには進めなかったものの、陣屋元村内部の空間構造をより具体的に把握するとともに、19世紀における陣屋元村のあり方として、無高人別の増加の背景に出稼ぎ人の存在などを指摘し、それらが弘化期には村方騒動として表面化したことなどを確認した。 以上の成果を踏まえて、年度末にはオンラインで国際セミナーを開催(共催)した。セミナーでは、越前国大野藩の貧民救済を研究するマーレン・エーラス氏の報告や塚田孝氏によるコメントに加えて、上記の青木家文書調査・研究について報告を行い、現在の都市史研究の到達点をふまえて、小城下町・陣屋元村の地域史把握の方法論について、ヨーロッパの都市のあり様なども含めて議論することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は年度当初より新型コロナ・ウイルス感染症が流行し、特に勤務地の大阪市内では流行拡大が深刻であったため、国内出張も制限される時期が続いた。そのため、当初予定していた遠方での史料調査・撮影などは全く実施できなかった。また、日常的にも遠隔授業への対応などの業務が増大したため、十分な調査・研究時間の確保が困難であり、近辺で実施可能な調査・研究のみに限定して取り組んだ。 当初想定していたほどの成果を得られなかった面もあるが、陣屋元村である伯太村の村方文書が確認され、それについての調査に着手できたことは、本研究課題の遂行において重要な意義があり、次年度以降の調査・研究にむけて前提となる基礎的な検討を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題において重要な位置を占める伯太藩陣屋元村の史料群が確認されたことで、その史料調査・分析を研究計画のなかに盛り込む必要がある。また、2021年度は昨年度に引き続き、年度後半まで新型コロナ・ウイルス感染症流行の影響が持続する可能性もあり、当面は勤務地の近辺で実施できる史料調査・分析などを中心に据える必要もある。 こうしたことから本年度の前半は、陣屋元伯太村青木家文書の整理・撮影・分析作業を中心に進め、史料目録などを作成するなかで、陣屋元村の村落構造を明らかにすることを第一の課題としたい。また、伯太藩と都市大坂の関係についても、これまで収集してきた史料を分析することで、新たな論点の確認を目指す。以上の2点については、年度末までに成果をまとめ、それぞれ論文を執筆する予定である。 さらに、既に所在は確認しているが、上記のような事情で調査実施を先延ばしにしている藩領村々の史料群については、2022年に本格的な調査を開始できるよう調査体制・方法の構築を進め、調査に向けた準備を本格化させたい。
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