研究課題/領域番号 |
20K00998
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
熊倉 和歌子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (80613570)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ウルバーン / アラブ部族 / マムルーク朝 / マムルーク体制 / 灌漑 / ナイル / オスマン朝 / 農業 |
研究実績の概要 |
本研究は、14世紀半ばから15世紀の環境変動期のエジプトを対象とし、環境変動と村落社会の状況、地方行政の変容との相互作用を究明する。そこで論点とするのは、第一に、村落社会における農業生産や灌漑、徴税にかかわる慣行や、それをめぐる人々の関係、第二に、環境変動期に見られた諸現象に対して、国家が見せたリアクションとしての地方行政の変化である。これらの問題に、文書史料から得られる村落社会の慣行や人的関係に関する情報や、叙述史料から得られる地方行政官の任官記録の解析によってとりくむ。これにより、中世の村落社会の状況を、環境史という枠組みからとらえなおすことを目指す。
昨年度進めた地方行政官の任官記録の分析から、15世紀初頭を境とする地方行政における変化が見えてきた。二年度目となる今年度は、村落社会の側から、変化の要因を探究した。その際、着目したのが「ウルバーン」と呼ばれる人々である。彼らは研究史において、ベドゥインやアラブ部族などと訳され、しばしば遊牧と結びつけて議論されてきた。しかし、本研究では、村落社会における彼らに関する叙述を見直し、彼らが灌漑の維持管理や農業生産においても重要な役割を果たしたことを明らかにした。また、彼らと王朝の支配者層とのコミュニケーションから、彼らの側から見た王朝との関係性が明らかとなった。このことは、王朝側の人間が作成した年代記や行政指南書が、いかにして、マムルーク朝という王朝を創造していたかに気づく機会を提示し、マムルーク朝の国家体制を相対的に理解することにつながった。今後、この問題については報告および論文にてまとめ、発表していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡航制限により、海外における当初予定していた史料調査が遂行できなかった。しかし、国内で入手可能な史料を可能なかぎり収集し、そこから新たな発見も得られていることから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後はうまくいけば、遂行できなかった海外調査を行いたいと考えている。 また、これまでに得られた成果を報告および論文の形でまとめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により海外渡航ができなかったため、その分の経費が未使用額として残った。 次年度使用額については、渡航制限の状況を見ながら、海外での史料調査を遂行するために使用したいと考えている。
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