研究課題/領域番号 |
20K00999
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大橋 厚子 名古屋大学, 国際開発研究科, 教授 (80311710)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 強制栽培制度 / 19世紀ジャワ島 / アジア史 |
研究実績の概要 |
初年度である2020年度は、先行研究の検討と公刊資料の分析によって研究枠組み作りを実施した。 第一に、政府が公共投資を通じて内外の各勢力・要素を接続する過程を、物流の側面に焦点をあてて追うことを決定し、経済生活向上と絡み合いながら、コンスタントな人口増加と森林破壊が進み今日に至る仕組みを検討する計画をたてた。本科研での具体的検討は強制栽培制度期に限定する。調査研究項目はつぎのようである。1.巨大公共投資「強制栽培制度」の歴史的前提、2.「強制栽培制度」下で生まれた仕組の理論化、3。地域社会で起きた現象: 3.1人口増加と森林破壊の数値的実証、3.2 庶民男女が得た便益と払ったコスト(青壮年男子の動員、既婚女性の尻拭いの役割)の質的および量的実証、4.人的物的な万一への備えの地域的仕組みの消滅の検討。 第二に、2020年度で終了した科研で実施した、オランダ政庁と政庁結託中国人によるジャワ島とジャワ島周辺島嶼部との貿易の性格分析から明らかになった諸点を出発点として、次の研究を進めることとした。1840年代はジャワ島にとっては混乱期であったが、その混乱の諸要因をグローバル(アメリカ発の恐慌と欧州のジャガイモ飢饉および革命、コーヒー国際価格の下落)、インド中国間(国際政治経済環境全般、アヘン貿易、アヘン戦争)、インドネシア海域(オランダ政庁が貿易をテコ入れした時期)、ジャワ島内部(不作・疫病・飢饉と銅貨循環麻痺との関係)に求めてその関連を追及する。 この作業は第一の研究の4.と連動するとともに、強制栽培制度は決してスタティックな制度ではなく、グローバル・リージョナルな環境の激変を生き延びるために諸ステークホルダーの行動によってダイナミックに変化し続けた制度であったことを議論する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定した研究のための枠組の設定が完了し、史料分析を開始した。枠組設定の過程で、グローバル・ヒストリーにおいて有望な問題領域を掘り起こすことができた。
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今後の研究の推進方策 |
二つの具体的課題について、さらなる史料収集と分析につとめつつ、論文のスケルトンを作成する。 ジャワ島内部だけの分析がオランダ政庁、中国人、および現地社会の関係をゆがめる結果となることを指摘したい。また採録された民話を活用して植民地下のジェンダー問題を議論する新しい試みを予定している。- 。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で国内外の出張による史料収集ができなかったためである。状況が許せば今年度以降史料収集を実施するが、厳しい場合には研究成果を英訳・英文校閲する費用に充てる予定である。
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