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2020 年度 実施状況報告書

トルコ共和国建国期における権威主義体制の形成とその社会への浸透

研究課題

研究課題/領域番号 20K01001
研究機関九州大学

研究代表者

小笠原 弘幸  九州大学, 人文科学研究院, 准教授 (40542626)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードトルコ共和国 / オスマン帝国 / アタテュルク / 権威主義
研究実績の概要

2020年度の研究成果は、近代オスマン帝国、ひいてはトルコ共和国の愛国主義とナショナリズムに大きな影響を与えた思想家ナームク・ケマルが著した『オスマン史』(1888年頃刊)序文の訳注を刊行したことである(小笠原弘幸(監訳)「ナームク・ケマル著『オスマン史』序文」『史淵』、2021年)。『オスマン史』は、オスマン帝国における近代的歴史叙述の黎明を告げる書であると同時に(史料批判についての洞察が見られる。ただし、『オスマン史』本文における史料批判が適切かどうかはまた別の問題である)、強い愛国主義的な主張が盛り込まれており、西洋の東洋学者たちがオスマン帝国に持っている偏見に対する苛烈な批判が行われている。また、真の歴史学を作り出したのはムスリム(たとえば、『歴史序説』を著したイブン・ハルドゥーン)であるというように、ムスリムとしてのプライドが表出していることも注目される。こうした彼の主張は、トルコ共和国期においても基本的に引き継がれると考えてよい(ただし、ナームク・ケマル自身の著作は、共和国初期に発禁処分になるという待遇を受けた。政府が操作できないほどの愛国主義的影響が恐れられたのであろう)。本研究の主題であるトルコ共和国初期における権威体制の形成について、思想的系譜という観点から有益な史料であると位置づけることができる。
なおコロナ禍のため、2020年5月に開催予定であった国際学会での報告(Turkologentag, Mainz, Germany)は開催が取りやめとなり、夏季に行う予定であったトルコにおける史料調査も実行できなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年9月に、ドイツのマインツで開催予定であったドイツ・トルコ会議(Turkologentag)にて報告する計画であったが(採択決定済)、コロナ禍の影響で開催自体が取りやめとなった。また、夏季に予定していたトルコにおける史料調査も、やはりコロナ禍のために実行することがかなわなかった。

今後の研究の推進方策

2021年度も、コロナ禍のため、現地での史料調査や国際学会への現地での参加は困難だと考えられる。ただし、オンラインで開催される学会も増えており、こうした学会に積極的に参加する予定である。2020年に開催が中止されたドイツ・トルコ会議は、2022年にウィーンで開催予定であり、状況は予断を許さないものの、参加する予定である。
史料調査についても、トルコ現地に滞在している研究者に協力を仰ぐ、あるいはインターネットを活用するなどして、研究に遅滞のないよう務める。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍のため、予定していた国際学会及び史料調査ができなかったため。2021年度は、現地の研究者の協力を仰いだり、インターネットを通じた史料収集などを積極的に行う。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うちオープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] ナームク・ケマル著『オスマン史』序文2021

    • 著者名/発表者名
      小笠原弘幸
    • 雑誌名

      史淵

      巻: 158 ページ: 107-127

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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